石の兵士から人だけを脱穀
脱穀人クレイオは、連枷を持って戦場へ来たことで笑われた。
麦穂を打ち、籾を殻から外す仕事だ。剣士は「棒を振るだけなら子どもでもできる」と言い、王都へ納めた穀物の三割を税として奪った。逆らった村人たちは、王の魔術で石像にされた。
クレイオの技能は収穫期専用だった。
【無傷脱穀:殻に包まれた実を、実を傷つけず殻から取り出す。殻の材質と厚さは問わない】
反乱鎮圧の日、王は石像となった農民を一万体の兵士へ作り替えた。
石鎧の内側には本人の身体と意識が残っている。命令に逆らえば殻が締まり、骨を砕く。勇者は「もう魔物だ」と聖剣を構えたが、斬れば中の人間まで死ぬ。
石兵が村へ向かって進む。先頭にいるのは、クレイオの母だった。石の顔から涙だけが流れている。
王は城壁の上で叫んだ。
「刈り取れ、農民ども! 互いの村を踏み潰せ!」
クレイオは麦打ち場へ立つ時と同じように足を開いた。
石は殻。中に守るべき実がある。
連枷を地面へ一度打ちつける。
乾いた音が平原を走った。
一万体の石鎧に、同時に細い割れ目が入る。外側だけが籾殻のように開き、中から人々が傷一つなく転がり出た。締めつけていた命令刻印も石殻側へ残り、空の鎧だけが地面へ崩れる。
母は自分の足で立ち、クレイオから連枷を受け取った。解放された農民たちは、武器ではなく鍬と鎌を石殻の山から拾う。
王が次の命令を出しても、動く兵は一体もいなかった。城門を守っていた石兵まで中身を取り戻し、内側から門を開いたからだ。
割れた石殻は王の兵器には戻らず、村へ運ばれて水路と家の礎になった。解放された一万人は、自分たちを魔物と呼んだ勇者ではなくクレイオの後ろへ並ぶ。城内の穀倉も彼らが開き、税として奪われた麦を村ごとの袋へ戻した。王は空の石鎧へ命令を叫び続けたが、返事は殻の転がる音だけだった。 母は最初の一歩を、自分の意思で王都へ向けた。朝だった。
《職業が【脱穀人】から【万魂脱殻王】へ書き換わりました》