空席を数える食堂

国境の村へ来た避難民の半数は、歩けない老人と幼い子だった。

働き手が少ないと知ると、村人は受け入れに眉をひそめた。

「食べる口だけ増える」

女領主ベアトリスは、閉鎖された集会所へ長机を置いた。

配給札は家長にまとめず、一人一枚にした。家族の中で弱い者の分が取り上げられないよう、本人が来られない場合は二人の当番が届ける。

一人一日一杯の麦粥。六歳未満と七十歳以上、病人には半杯追加。各家が六週間分の穀物を残した後、二十五升につき一升を共同厨房へ。集めた量、食べた人数、残量を入口に毎日掲示する。出身地による列は作らない。

「給仕は誰がする」

農家の主婦たちは警戒した。

「有給の当番を二人雇います。給金も入口に書きます。足りない日は厨房を閉める。女だから、避難民だからと無償労働を当然にはしません」

すると避難民の老料理人が手を挙げた。

「賃金をもらえるなら、粥を焦がさず百人分炊ける」

村の若い母親も一日おきの当番へ応募した。

働けない老人たちは、食卓で豆を選り分けたが、それは食事の代価ではない。選り分けなかった日にも札は同じように切られた。やめても粥は出る。だからこそ、彼らは笑いながら続けた。

問題は椅子だった。

集会所には四十脚しかない。ベアトリスが不足数を掲示すると、翌朝から一軒につき一脚ずつ古椅子が届いた。誰も二脚を求められていないのに、家具屋は修理済みを十脚持ち込んだ。

初日の夕食、入口の帳簿には穀物の残りが「あと十九日」と正直に出た。それを見た農家が翌朝の納付を相談しながら、古参の老人と避難民の少女が同じ鍋の底のおこげを奪い合った。

老料理人が二つに割ると、二人は同時に笑った。

食後、ベアトリスは入口の札を「満席」にしようとした。

だが家具屋が一脚を外へ残した。

「明日、もう一人来るかもしれん」

そこで札は書き換えられた。

『本日の食事百二杯。空席一。遅れて来た人は鐘を鳴らしてください』

夜更け、扉の外で小さく鐘が鳴った。

老料理人は火を消していなかった。