粕汁の湯気

初雪の日、杜季は酒蔵でもらった酒粕で粕汁を作った。

大根、人参、牛蒡、鮭。味噌を溶き、最後に酒粕を加える。鍋から甘く発酵した香りが立つ。

同居する弟の環士は、酒の匂いが苦手だった。

「酔わない?」

「ちゃんと煮れば大丈夫」

それでも弟の椀には少なめに入れた。

一口飲んだ環士は、眉を寄せる。

「やっぱり酒だ」

杜季は自分の椀と交換した。弟の分へ牛乳を少し足し、もう一度温める。

白さが増し、香りが柔らかくなった。

「これなら飲める」

伝統的ではないが、残すよりよい。

翌朝、粕汁はさらに濃くなっていた。今度は最初から鍋を二つに分け、一方へ牛乳を入れる。

近所の友人が雪かきを手伝いに来たので、両方を出した。酒粕派と牛乳派に分かれ、鍋は同時に空になった。

夜、外ではまた雪が降る。二人で残った根菜を切り、翌日の分を作る。

環士が酒粕を少し多く入れた。

「慣れた?」

「雪の日の匂いには、これくらい」

窓を曇らせる二つの湯気は、鍋の上で混ざった。発酵した甘さと牛乳の温度が、冷えた家の壁までゆっくり染みた。

次の冬、環士は自分で酒粕を買ってきた。以前より多い量を鍋へ溶かし、牛乳は後から各自の椀へ入れる。杜季が帰宅すると、家の窓はすでに白く曇っていた。弟は味見を繰り返し、頬を少し赤くしている。「煮たから酔わない」と言うが、部屋が温かいせいかもしれない。二人で雪かきの道具を玄関へ出し、粕汁を飲む。鮭の脂と根菜の甘さ、発酵した香りが身体へ落ち、外へ出る前の足先までゆっくり温めた。

雪かきから戻ると、鍋の表面に薄い膜が張っていた。環士が混ぜ、杜季がもう一度火へかける。冷えた手を湯気へかざすと、酒粕の甘さが手袋の雪の匂いまで溶かした。

雪かきを終えた二人は、椀を持ったまま玄関へ座った。濡れた長靴から冷気が立ち、粕汁の湯気と足元で静かに混じった。