繭の外から見ている

地下室の天井から、セマの繭が吊られていた。

半透明の膜の中で、彼女の脚は六本に分かれかけている。床には白い卵が三十一個。孵化すれば繭の中の人間性を食べ、彼女を母虫に変える。

オディルは鉄靴を履いた。

卵は一つ残らず潰さなければならない。そして潰した者の身体には、一個につき一つ、卵が見ていた眼が開く。誰かが代価を負わなければ、卵は何度でも蘇る。

一個目を踏む。

粘液が弾け、オディルの左掌に小さな瞼が開いた。中の黒目がセマだけを見た。

五個潰すと、指の節に眼が並んだ。十個で腕、十五個で鎖骨。どの眼も別々に瞬き、暗闇を昼のように映す。

「やめて」

繭の中からセマの声がした。「私より、おまえの方が魔物になる」

「外見だけなら、前から俺の負けだ」

笑った口の内側、頬の裏にも十六個目の眼が開いた。涙が唾液へ混じる。

二十個を越えると視界が多すぎて、上下が分からなくなった。床、天井、自分の背中、繭の内側まで同時に見える。閉じたいと思っても、どの瞼を動かせばよいか分からない。卵の一つ一つには、孵化した後でセマを食べる光景が映っていた。オディルは三十一通りの未来を見ながら、吐き、踏み続けた。

三十個目が潰れたとき、繭が裂けた。セマは二本の脚で床へ落ち、人の腕で身体を抱いた。六本脚の影は消えている。

「終わった」

彼女が息をついた直後、オディルの三十の眼が一斉に繭の中を向いた。

最後の卵は、裂けた膜の奥、セマの元いた場所に張りついていた。手も足も届かない。鉄靴を脱ぎ、オディルは繭へ頭を入れた。

卵を歯で噛み砕く。

苦い殻が割れ、喉の奥に三十一個目の眼が開いた。内側から自分の口を見上げる視界が加わる。

すべての卵が消え、セマの肌から虫の模様が引いた。

彼女がオディルの肩へ触れる。

「顔を上げて」

「見ない方がいい」

それでも彼女は振り向かせた。

オディルの元の二つの眼は閉じていた。代わりに掌、腕、胸、首、舌の下まで三十一の瞳が開き、救われたセマを余すところなく見つめる。

彼女が泣くと、オディルの全身から三十一人分の涙が流れた。