船から降ろさない大箱
河港では、陶器が陸へ上がるたび一割割れた。
船倉から壺を一個ずつ背負い、岸へ置き、数え、馬車へ積み直す。二百個の移し替えに三刻、触る回数は一個につき六回。港湾組合は破損を船員と車夫のせいにし、双方から罰金を取っていた。
荷役見習いの土岐佳弥は、壺二百個を木枠の大箱へ収めた。箱には船の滑車で吊れる鉄輪を四つ、馬車の荷台へ固定できる溝を二本つける。
「そんな箱ごと動かせるものか」
組合長が笑う中、船が桟橋へ着いた。
滑車の鉤を四つの輪へ掛ける。大箱は船倉から一度だけ持ち上がり、そのまま岸で待つ馬車の溝へ下りた。留め金を二本差し込む。
移し替えは七分で終わった。
誰も壺へ触れていない。馬車が市場へ着くと、同じ大箱を倉庫の滑車で荷台から降ろす。封を切って二百個を調べても、ひびは一つもなかった。
試験の最中、河上から強い風が吹き、岸壁へ横雨が叩きつけた。従来なら壺二百個が石畳へ並び、濡れた手から滑る時間だった。だが大箱の封は閉じたまま。雨粒は外板を流れ、中の乾いた藁には一滴も届かなかった。
市場の倉庫で封を切るまで、荷数は《大箱一》として追跡された。船員から荷役人、車夫、倉庫番へ二百回ずつ数を申し送る代わりに、同じ封印番号を四か所で読むだけ。受け渡し記録は六枚から一枚へ減り、どの工程で割れたか争う必要も消えた。
保険商は破損率一割から零の実演を見て、陶器便の保険料を三分の一へ下げた。箱代は二航海で回収できる数字だった。壺を抱えて濡れた板を渡る作業も消え、荷役人の転倒負傷は前便の三人から零になった。
従来は二十個割れ、荷役人四十人を三刻使った。今日は破損零、荷役八人、港に止まった時間は七分。船は潮が変わる前に次の港へ出られた。後続の二隻もその日のうちに桟橋へ入り、沖待ちの停泊料まで消えた。
罰金台帳を抱えた組合長だけが青ざめた。割れるたび増えていた収入が、一箱で消えたのだ。
船主と陸運商が同時に注文札を佳弥へ差し出した。必要数は五十箱ずつ。
港務卿は二枚を重ね、その上へ公印を押す。
「船と馬車で同じ箱を使う。規格を決める役は佳弥、君に任せる」