避難民の赤土城

戦火を逃れた三百人が暮らす赤土原の集落には、夜ごと野盗が来た。食料を奪われても領主軍は動かず、人々は故郷ごとの小さな柵を作って互いを締め出していた。

配給係ニマは、集落全体を守る低い土塁と、誰でも逃げ込める四つの門を提案した。

資金は配給から引かない。一家につき一口を上限に、銀貨、作業一日、荷車半日のいずれかを選ぶ。病人、妊婦、十四歳未満だけの世帯は免除。大口寄付も一口として数え、門の命名権も優先居住権も渡さない。全ての口は赤い粘土板一枚で掲示され、使った分だけ裏返す。

近隣の豪商が銀貨百枚を積んだ。

「私が全部出す。南門を商隊専用にしろ」

ニマは一枚だけ受け取り、残りを返した。

「一口で足ります。ここでは、逃げ道は売りません」

その場にいた人々は息をのんだ。金のない者も壁の持ち主になれると、初めて分かったからだ。

翌朝、元兵士は土の締め方を教え、仕立屋アルドは古い天幕を土嚢へ縫い直し、子どもは水を運んだ。出身村ごとの柵は一本ずつ外され、その木が四つの門へ使われた。誰も号令で並べられなかった。自分の一口を、自分で選んで持ってきた。

作業の三日目には、どの故郷の者が門番を多く出すかで言い争いが起きた。ニマは出身地の欄を台帳から消し、門番一刻を粘土板の半分として数え直した。東門に立った者は翌日は西門を選べる。守る場所を固定しない規則にすると、人々は知らない家族の顔を覚え始めた。かつて互いを遮った柵が門板へ変わるたび、集落の小道も一本ずつつながった。鐘縄も四門で同じ長さに揃えた。

完成した夜、野盗の松明が土塁の前に並んだ。四門には同じ数の見張りが立ち、内側の鐘が一斉に鳴る。野盗は隙間を探したが、故郷ごとの境はもうない。やがて松明は暗闇へ退いた。

朝、子どもたちは外した柵板へ、それぞれの故郷の名を書いた。それを門の上で一枚につなぐ。

旗代わりに揚がったのは、赤、青、灰色の継ぎ布だった。

風を受けた布の下で、四つの門が同時に開いた。