雪門の肉まん

 雪原の狩人ユルグは、白い湯気の箱から丸いパンを渡された。

 夜更けの境界門。その脇にある小さな売店で、「肉まん」と呼ばれる食べ物は紙に包まれていた。外は吹雪で、門の通行許可が出るまであと一時間ある。

「武器を持ったままでは食べにくいな」

「両手で持つと温かいですよ」

 売店員に言われ、ユルグは弓を壁へ立てかけた。革手袋を外し、肉まんを包む。掌へじんわり熱が移り、凍えていた指の節が少しずつ動き始めた。

 白い生地は雪の塊のように見えたが、触れれば柔らかい。半分に割ると、中から豚肉、玉葱、筍の餡が現れ、胡麻油と醤油の香りが立った。

 一口かじる。生地はほのかに甘く、肉の塩気を受け止める。筍がこりりと鳴り、熱い汁が舌へ触れた。

「保存食ではないのか」

「すぐ食べる方がおいしいです」

 ユルグの里では、冬の食べ物は凍らせるか乾かす。長く持つことが価値で、今だけ温かいものへ金を払う習慣はない。

 門の番人が寒そうに足踏みしている。ユルグは二つ目を買い、持っていった。

「賄賂ではない」

「分かっています」

 番人は笑い、両手で肉まんを受け取った。二人は門柱の陰へ並び、吹雪を眺めながら食べた。話すことはほとんどない。ただ、ときどき白い湯気が顔の前で重なった。

 ユルグは今夜、里へ戻ればすぐ次の狩りの準備をするつもりだった。長い冬は休みを許さない。しかし、許可証の時刻を見直すと、明日の昼まで門は閉じない。急いで山へ入る必要はなかった。

「里へ着いたら、火を焚いて眠る」

「狩りは?」

「雪が止んでからだ」

 番人は肉まんの最後の一口を飲み込み、満足そうに頷いた。

 番人の髭には白い生地の欠片がついていた。ユルグが指で示すと、番人は慌てて払い、二人はまた声を殺して笑った。吹雪の夜に笑うのは久しぶりだった。

 やがて門が開く。ユルグは手袋をはめ直したが、指先にはまだ生地の温度が残っていた。吹雪の中へ踏み出すと、胸元から肉と葱の香りが上がる。消えてしまう温かさだからこそ、今夜は大事に持ち帰ろうと思った。