靴底の砂

玖美の捜索グループから、私は外された。

誰より彼女を理解し、失踪した三日間も眠らず探した私だけが、事情聴取の予定さえ知らされなかった。玖美が弱るたび、仲良し四人の連絡網を止め、私の家で休ませてきた。人の声が多いと混乱する子だからだ。

警察が来る前、私は玄関に残った玖美の靴を洗った。靴紐の結び方まで普段と違っていたので、いつもの形へ戻した。泥だらけでは、どこへ行ったか誤解される。友人の朔良に「また勝手に」と責められ、私は「今回は無事だったでしょう」と答えた。

すると朔良は顔色を変えた。

今回が初めての失踪だと、私は皆に言っていたからだ。前の二回は失踪ではない。連絡を切り、静かな場所で考え直す時間を作っただけだった。玖美も帰る頃には「迷惑をかけてごめん」と言った。感謝と同じ意味だと思っていた。

玖美は昨夜、保護された。面会できると聞いて病院へ行くと、仲良しグループの三人と相談員が入口を塞いだ。

「玖美を連れ出したの、凪紗なんだね」

連れ出したのではない。都会の人間関係に疲れた玖美が「全部消えたい」と言うから、山の貸別荘へ連れていった。予約名を私にし、車では目隠し代わりに眠れる薬を渡した。景色を見れば戻りたくなるかもしれないからだ。スマートフォンを預かり、窓を閉め、落ち着くまで鍵を持った。途中で帰りたいと言い出したが、混乱している時の言葉を聞けば、本人のためにならない。

玖美は浴室の小窓から逃げ、夜道を歩いて保護されたという。

私が洗った靴の泥には、貸別荘の庭にだけ混じる白い砂が残っていた。以前も同じ場所へ連れていかれたと、玖美は証言した。

朔良は接近を禁じる書類を差し出した。

三人は、玖美を守るために私を連絡網から外したのだ。朔良は、玖美が私を怖がっていると繰り返した。けれど病室の扉の向こうで泣く声は、いつも私を呼ぶ時と同じ高さだった。

病院を出て、朔良が投稿した見舞い写真を拡大した。

玖美の新しい靴底には、細かな白い貝殻が刺さっていた。

県内であれを庭に撒く保護施設は、一つしかない。