飛竜舎の朝食
竜騎兵団が聖女セレドナを解任した翌朝、飛竜たちは餌場で互いの翼を食いちぎった。
肉の量は足りていた。飼育係は頭数どおりに桶を並べた。だが最初の一頭が隣の肉へ首を伸ばした瞬間、三十頭が一斉に暴れ出した。
鎖が切れ、騎兵が壁へ叩きつけられる。団長ヴァドリクが愛竜へ命令しても、竜は主人の肩章ごと噛み砕いた。鎮静薬を矢で打ち込むと、眠る前にさらに興奮し、屋根を突き破った。
「昨日までは同じ肉で静かだった!」
老飼育係が、餌場の梁に結ばれていた七色の紐を見た。紐はまだある。だが朝ごとにセレドナが歌っていた短い祈りがない。
彼女は竜を従わせていたのではない。空腹の強さを均等にし、一頭の焦りが群れへ伝わらないよう整えていた。弱い竜にも強い竜にも同じ量を食べさせるための、わずかな加護だった。
騎兵たちは「歌わなければ餌を出せない臆病者」と彼女を笑い、軍人ではないとして解任した。その最初の朝食で、出撃可能な飛竜はゼロになった。
団は飛竜を一頭ずつ別房へ移した。だが群れから切り離された竜はさらに怯え、壁へ体当たりした。三つの房が壊れ、王都上空を巡回する予定だった部隊は地上から一歩も動けない。市民には、竜の咆哮だけが朝鐘より長く響いた。
空輸予定だった薬箱は滑走場に積まれたままになり、山村から届いた救援要請には『飛べる竜なし』の赤札が返された。
山麓の救護飛竜舎では、セレドナの歌が終わるまで、雛竜たちが桶の前で並んでいた。飼育主任テオラが、一番小さな雛の腹を撫でる。
「この子はいつも餌を奪われていた。今日は初めて自分の分を食べ切った」
救護舎は彼女へ指揮権ではなく、給餌手順を決める権限を与えた。飼育係たちは歌の意味を学び、代替できる補助具の研究も始めた。
昼、傷だらけの竜騎兵が飛び込んだ。
「団長命令だ。今朝のことは不問にする。すぐ戻って歌え」
セレドナは雛竜の桶を置き直した。
「竜騎兵団の給餌安定契約は、解任辞令の交付時に終了しました」