骨笛の合図

処刑人ムルダは、死刑囚の肋骨から作られた笛を腰に下げていた。

ひと吹きすれば、過去に斬った死者が一人だけ姿を現し、七呼吸のあいだ証言する。ただし笛が鳴るたび、ムルダ自身の骨が一本、中空になる。空になった骨は脆く、次の衝撃で砕ける。

処刑台へ連れてこられたエヴァシュは、墓荒らしの罪に問われた若い墓守だった。領主の息子の棺を開き、遺体を盗んだという。

「盗んでいない」とエヴァシュは言う。「棺は最初から空だった」

領主の息子は生きている。農村を襲った夜、村人に顔を見られたため、死を偽装したのだ。唯一の目撃者は半年前、ムルダが盗賊として斬った女だった。

監督官が斧を渡す。「執行せよ」

ムルダは斧ではなく骨笛を取った。

一音目。

左の鎖骨が空になり、冷たい風が骨の中を通った。処刑台の脇に、斬首された女の影が立つ。

「領主の息子を見たか」

「村で見た。火を放っていた」

影が消える前に、監督官が叫ぶ。「死者の証言は一人では証拠にならぬ!」

規則では三人必要だった。

二音目。右の鎖骨が空になる。別の死者が現れ、息子の指輪を村で拾ったと告げた。

三音目。肋骨が一本空になり、ムルダは咳き込んだ。三人目は領主家の馬丁だった。息子を夜中に国外へ送ったと証言する。

兵たちがざわめく。領主は顔色を変え、弓兵へ合図した。

矢が飛んだ。

ムルダはエヴァシュを庇った。矢は鎖骨へ当たり、空になった骨を粉々に砕く。左肩が落ちる。それでも彼は笛を離さなかった。

「三人そろった」と墓守が叫ぶ。

「まだだ。あいつらは死者を嘘つきにする」

ムルダは四音目を吹いた。今度は背骨の一節が中空になった。

現れたのは、昨日「病死」した領主の書記だった。彼は隠し帳簿の場所を告げ、息子の偽葬儀に使った金額まで読み上げた。

群衆が屋敷へ向かい、兵たちは領主を拘束した。エヴァシュの縄が切られる。

ムルダは笛を下ろした途端、膝から崩れた。砕けた鎖骨、空の肋骨、穴の開いた背骨では立てない。

墓守が抱き起こすと、彼の身体から澄んだ音がした。呼吸のたび、風が骨を通って笛のように鳴る。

「生きてるか」

ムルダは頷いた。

だが返事は口からではなく、胸の奥の空洞から響いた。以後彼の声には、四人の死者の音が混じり、自分だけの声がどれだったか誰にも聞き分けられなかった。