からあげ一個、明日の分

七海はコンビニのからあげを、六個入りだと思って買った。

部屋でふたを開けると、五個しかない。ラベルを確認すれば、確かに「五個」と書いてある。勝手に六個だと思い込み、一個足りないような気持ちになっていた。

夕食はからあげと千切りキャベツ、梅おにぎり。簡単に済ませるつもりだった。けれどテーブルに並べると、五個を今夜どう配分するかで迷う。

三個食べて二個残すか、四個食べて一個残すか。明日の弁当に一個だけ入れても寂しい。全部食べれば、夜に揚げ物を食べすぎた気がする。

七海は朝から、数字に追われていた。月末の集計、未処理件数、残業時間。帰宅してからも、歩数計が目標まで千二百歩足りないと知らせている。五個のからあげまで、正しい数に分けなければならない気がした。

一個目を食べる。衣は少し冷めていたが、にんにくが強く、空腹においしかった。二個目の途中で、大学時代の友人から「最近どう?」とメッセージが来る。七海は元気、忙しい、また会おう、と三つの無難な言葉を並べ、送らずに画面を閉じた。

三個目を食べたところで、腹はまだ空いていた。

七海は四個目を取る。明日の分を減らしたことへの小さな罪悪感が出てきたが、明日の自分は明日の昼に何か買える。今夜の自分だけが、今ここで空腹を感じている。

結局、五個目も食べた。空の容器を見て、少し笑う。明日の弁当は梅おにぎりと、会社の売店のスープにすればいい。

歩数目標も達成しなかった。返信も保留のまま。けれど、からあげは一個も残さず、自分の腹へ渡した。

七海は友人への下書きを消し、「今日は疲れた。また元気な日に話したい」とだけ送った。

五個しかない夜ではなく、五個全部食べてよかった夜にする。今日はそれでいいと思えた。

送ったメッセージには、しばらく既読がつかなかった。七海は待たずにキャベツの残りを冷蔵庫へ入れる。友人の返事も明日の昼食も、今夜のうちに整えなくていい。

空のからあげ容器は、食べすぎの証拠ではなく、空腹に気づいて応えた跡だった。そう呼び替えると、胃の重さまで少しやわらいだ。