一本の茎に二つの収穫

城壁孤児院に残された畑は、わずか二十歩四方だった。

 院長は背の高い玉蜀黍を選んだが、それだけでは冬の豆が足りない。豆を植えるには支柱が百本必要で、材木商は孤児院と知って三倍の値をつけた。

 春日井夕映は、支柱を一本も買わなかった。

 玉蜀黍が膝丈になった日、その根元へ蔓豆を一粒ずつ蒔いた。豆の蔓は、伸びるそばから太い茎へ巻きつく。

「作物同士が養分を奪い合うぞ」

 材木商ギレスは、失敗すれば畑を借金の担保に取る証文を置いた。比較のため、隣の五歩四方には玉蜀黍だけを同じ間隔で植えた。

 夏、豆は緑の螺旋となって茎を登った。夕映は縄で縛らず、蔓の向きを最初の一度だけ茎へ添える。支柱代はゼロ。豆の葉は玉蜀黍の葉より下に広がり、同じ場所の高さを分け合った。

 収穫日、役人が二つの区画を量った。

 単作区画の玉蜀黍は一株平均二・一穂。混植区画は二・〇穂。玉蜀黍の減少は五十本で五穂だけだった。

 その代わり、混植区画からは乾燥豆が百六十斤取れた。単作区画の豆は当然ゼロ。土地を増やさず、支柱も買わず、一枚の畑から二種類の冬食が出た。

 豆用に空けたはずの地面には、まだ通路が残っている。子どもたちは脚立を使わず腰の高さから莢を摘み、百六十斤を一日で収穫した。

「豆が茎を締めて、来年の種を弱らせる」

 ギレスは穂を割った。粒の数も重さも単作とほぼ同じ。蔓は生きた支柱を借りただけで、穂を潰していない。

 会計係が、材木百本の見積金貨二十枚と、収穫豆の市場価格金貨三十二枚を並べた。払うはずだった金が消え、売れる豆まで残った。

 ギレスが証文を巻こうとすると、孤児院の最年少の子が豆蔓を一本持ち上げた。その下には、材木商の焼印を押した古い支柱が土へ埋められている。前年に寄付された木を隠し、今年また売りつけようとしていたのだ。

 監察役は支柱を証拠袋へ入れ、担保証文を破った。

「孤児院の畑は夕映の混植法を正式採用する。来季は城壁沿い二町も貸し与え、収穫豆は軍が全量買い取る」

 一本の玉蜀黍へ、二枚の契約札が結ばれた。