一番早く切れる薬から

王立病院は、毎月薬を捨てていた。

倉庫には同じ解熱薬が三百本。薬師は入口に近い箱から取り、新しく届いた薬をその前へ置く。奥では期限の短い瓶が眠り、気づいたときには使えない。

「薬が余るほど仕入れた会計のせいだ」

倉庫長は絃へ責任を押しつけた。

絃は瓶の効能ではなく、使える期限だけを見た。期限が早い順に棚へ並べ、最も早く切れる箱を手前へ出す。棚札には残り月数を大きく書いた。

その翌日、町で夏熱が流行した。百人分の解熱薬を今すぐ出せと命令が来る。

倉庫長は届いたばかりの箱へ手を伸ばした。絃が止め、手前の黄色札を開ける。期限まで二か月の薬が百二十本。品質検査は合格しているが、今回使わなければ来月には捨てる予定だった。

患者へ配ると、苦い香りの湯気が病棟を満たした。夕方までに六十三人の熱が下がり、副作用はゼロ。

一方、新しい薬三百本はそのまま残った。

会計官が計算する。廃棄予定だった百二十本のうち百本を使い切り、金貨四十枚を救った。次に切れる箱も手前にあるため、誰が取りに来ても迷わない。

翌朝には別の病棟から咳止め五十本の依頼が来た。絃が不在でも、見習いは期限札の一番短い列から取った。戻ってきた絃が確認すると、選択はすべて正しい。担当者の勘や記憶に頼らず、棚そのものが順番を示していた。

棚卸し時間も二刻から三十分へ減った。期限札ごとに本数を足せば、来月失効する薬が即座に分かる。会計官は余りそうな二十本を地方診療所へ回し、廃棄ではなく治療へ変えた。

倉庫長の名人芸だった『奥から探し当てる作業』は、誰にも必要とされなくなった。

倉庫長は「偶然だ」と言った。

絃は先月の廃棄記録を机へ置いた。五十二本、四十七本、六十一本。すべて新しい箱を先に使った結果だった。

病院長は棚を歩き、黄色、白、青の期限札を確認する。

「薬は古い順ではなく、期限が早い順に使う。これを院内規則にする」

倉庫長が口を挟む前に、病院長は人事票へ署名した。

「絃を医薬在庫主任へ任命する。来月から廃棄予算は、患者の薬代へ戻せ」