七日分の布を煮る

女騎士団では、月に一度、訓練参加者が半分になった。

支給される月経布は水ですすぐだけで、湿ったまま鎧箱へ戻される。臭いと痒みで歩けなくなる者もいたが、団長代理クレアスは「女は根性が足りない」と訓練記録へ書いた。

転生者の凪は、前世で学校保健の仕事をしていた。彼女が使った知識は一つ。使用した布を煮沸し、完全に乾かしてから保管すること。

凪は大鍋一つと、日当たりのよい物干し場を借りた。洗った布を湯へ沈め、乾いたものだけを七日分ずつ通気する袋へ入れる。香水も治癒薬も使わない。

物干し場には目隠し布を張り、名前を書かず番号札で返した。誰が何枚使ったかを同僚に知られずに済む。これまで隠して湿った布を使い回していた新人も、夜のうちに袋を交換できた。凪は体の話を演説にせず、清潔な七枚を黙って棚へ置いた。翌朝、その棚は空になっていた。

「下着を煮るために騎士団の薪を使うのか」

クレアスは嘲った。

凪は前月の記録板を壁へ掛けた。月の第三週、欠席四十一人、医務室二十八人、薬草費銀貨百二十枚。今月は煮沸した布を希望者三十人だけに配った。

一週後、配布組の欠席は一人。従来組三十人では十七人。痒みを訴えた人数は十四対ゼロだった。誰の体調かは公表せず、数字だけを並べた。

翌月には八十人全員が凪の布を使った。欠席者は三人。訓練場には盾が八十枚並び、隊列の穴が消えた。薬草費は百二十枚から九枚に下がった。

ちょうど王都大会の選抜戦が始まり、女騎士団は初めて全員で出場した。四列の騎兵が乱れず突撃し、男騎士団の防壁を一度で割った。観覧席の将軍イネスは立ち上がる。

クレアスは勝利を自分の指導力として報告しようとした。だが医務官が、二か月分の欠席札と薪代一枚を将軍へ渡した。

「根性ではありません。凪殿の鍋です」

将軍はクレアスから訓練印章を取り上げ、凪へ差し出す。

「衛生装備官に任ずる。女騎士団だけではない。王国軍二万人分の布と乾燥場を整えてくれ」

凪が印章を受けると、八十枚の盾が同時に地面を打った。