七番ロッカー

七番ロッカーの中で、彼はまだ息をしていた。

内側から三回、弱い音がした。私は鍵束から七の札を選び、周囲を見てから扉を開ける。狭い暗がりの奥で、少年が膝を抱えていた。口に巻かれた布は湿り、頬には細い傷がある。

「大丈夫か」

少年は何度もうなずいた。

私は布を少し緩め、ペットボトルの水を飲ませた。急に飲むとむせるので、一口ずつ。容器の底が床へ触れるたび、細かな震えで輪を描いた。彼は私の袖をつかみ、外へ出ようとした。

「まだだ。人が来る」

そう言って押し戻すと、少年の目に恐怖が戻った。私は安心させるため、助けは近い、静かにしていれば家へ帰れる、と言った。

構内のどこかで低い振動が始まった。床がゆっくり傾き、ロッカーの金属板が一斉に鳴る。換気口から、冷たい風とディーゼルの匂いが入ってきた。

「電車?」

少年が布越しに尋ねた。

「似たようなものだ」

私は答え、七番の空気穴を指で確かめた。詰まりはない。隣の六番には毛布、八番には水と非常食。番号札は一から十まで並んでいるが、使っているのは七番だけだ。ほかの扉は、走るたび中身のない音を返した。

遠くで男たちの声がする。

「点検は終わったか」

私は扉を半分閉めた。少年が手を伸ばし、指を隙間へかける。

「お願い。警察を呼んで」

「呼ぶよ」

少年はその言葉を信じようとするように、目を固く閉じた。私は腕時計を見る。予定より十分遅れている。ここで騒ぎが大きくなれば、次の場所まで持たない。扉の内側に貼った薄い吸音材を、もう一度押さえた。

足音が近づいた。私は少年の指を一本ずつ外し、扉を閉めた。鍵を二度回す。中からまた三回、今度は少し強く叩く音がした。

男が運転席側から顔を出した。

「次の休憩所まで二時間だ。商品は?」

「七番は生きてる。まだ電話に使える」

シャッターが上がり、夜の高速道路が細く見えた。

ここは駅のコインロッカーではない。冷凍トラックの荷室を仕切った箱だ。私は誘拐犯として、身代金の声を失わないよう呼吸を確かめただけだった。