二つの校門

校門前で写真を撮る列を見て、蓮見亘は少し離れた植え込みに立っていた。

三年の六月に転校してきた彼にとって、この門をくぐった回数は二百回にも満たない。みんなが「三年間ありがとう」と門柱へ触れるたび、自分だけ借り物の卒業式にいる気がした。

「亘、こっち」

麦倉佳澄が呼んだ。手にはA4判の紙がある。

近づくと、それは亘の前の学校の校門を印刷した写真だった。海沿いの小さな中高一貫校。生徒数の減少で閉校し、最後の夏に門だけが撤去された。亘は転校初日、自己紹介で学校の名前を噛み、それ以来ほとんど口にしなかった。

「どこで見つけた?」

「前に見せてくれた写真、送ってもらった」

佳澄は図書室の厚紙に写真を貼り、雨で滲まないよう透明な袋へ入れていた。四隅には、今のクラス全員の小さな署名がある。

佳澄は紙を胸の前に持ち、今いる校門の横へ並んだ。

「これなら二校とも入る」

「合成みたい」

「卒業なんて、もともと合成でしょ。入学したときの自分と、今の自分を一枚にするんだから」

写真係の友人が、早く並べと手招きする。

亘は佳澄の隣へ立った。紙の中の門には、夏服の自分が小さく写っている。今の制服と違う校章、短く切る前の髪、もう会えない担任の背中。

「笑って」

言われても、亘はどちらの学校へ向けて笑えばいいかわからなかった。

佳澄が紙の下から指を出し、写真の中の亘の頭をつつく。

「そっちも笑ってない」

思わず吹き出した瞬間、シャッターが切れた。

画面には、現在の門柱、紙の中の古い門、笑う佳澄、その間で目を細めた亘が写っていた。四つの角が風でめくれ、紙の校門は今にも飛び去りそうだった。

「押さえておけばよかった」

亘が言うと、佳澄は首を振った。

「飛んでも、持ってたってわかる」

亘は紙の校門を丸めず、卒業証書と一緒に筒へ入れた。少し幅が合わず、端が折れた。

「きれいに入れなよ」と佳澄が言う。

「門はもう一回なくなってる。これくらい平気」

筒の中で、二つの学校の卒業が重なって音を立てた。

帰り際、亘は二つの門を同時に振り返った。一つは道路の向こうにあり、一つは佳澄の腕の中にある。

どちらも自分の学校だった。

そのことを証明するのに、在籍した日数は必要なかった。