兄妹三人の当番表

朝比奈家の居間に、白い当番表が立てられた。

義母の多津は退院後、食事と入浴に介助がいる。長男の孝一郎、長女の瑤子、次男で眞弓の夫・知暁が、油性ペンを持って集まった。

「平日は眞弓さん」

孝一郎が月曜から金曜を囲む。

「土曜も眞弓さんでいいよね」

瑤子が書き足す。

知暁は日曜の欄へ妻の名を入れ、夜間欄には赤字で《随時》と書いた。

「僕ら三人は月一回、顔を出すってことで」

眞弓は黙って見ていた。

「何か希望ある?」

瑤子が親切そうに尋ねる。

「夜中の担当も決めておく?」

「あります」

眞弓はボードを百八十度回した。

裏面には、別の当番表があった。多津の実子三人だけで、朝、夕、夜間、通院を均等に分けている。孝一郎の出張日も、瑤子の習い事も、知暁の接待も考慮されていない。

三人が同時に声を上げた。

「勝手に決めるな」

「私には家庭があるのよ」

「俺の仕事を何だと思ってるんだ」

眞弓は表側を指した。

「私の仕事と家庭を無視して作った表と、同じ方法です」

多津は不機嫌に言った。

「嫁が一人でやれば揉めないのに」

「私は、正月も法事も《家族だけ》と言われて外されました。今回も家族だけで決めてください」

知暁が妻の腕をつかもうとしたが、眞弓は別居先の鍵を見せた。母の介護を無断で引き受けた夫とは、すでに住居を分けている。介護への同意もない。

そこへ介護支援専門員が到着した。家族介護を前提に組んだ計画は、担当者全員の署名が必要だという。

孝一郎はペンを置いた。

「施設を探してくれ」

「待機期間中の介護者が必要です」

専門員は答え、裏面の表を三人の前へ戻した。

瑤子が眞弓の名前を書き足そうとする。

専門員はその欄を手で覆った。

「本人が拒否しています」

長い沈黙のあと、最初の夜勤欄に書かれた孝一郎の署名から、インクが紙へ染み始めた。

次は瑤子、その次は知暁だった。