冬至までの丸太小屋
伐採村では、孤児のヴェラたちが夏の作業小屋で暮らしていた。壁は板一枚。冬至を越せば、朝まで生きられない。
代官ゼフは、村会で大きな孤児院の設計図を破った。
「石造りは春まで完成しない。必要なのは名誉ある建物ではなく、冬至までに暖かい家だ」
彼が提案したのは、売れた丸太三十本につき一本を共同材へ回す制度だった。細い薪材は対象外。現金で払う場合は伐採日の公示価格を使い、値下がりを理由に後から額を変えない。共同材の本数、使用先、残りは伐採場の門へ毎日刻む。領主林から切る丸太も同率だった。
共同材の板には「残り四十二本、冬至まで十二日」と毎朝書かれた。雪で伐採が止まった日は、誰も不足を隠さなかった。すると家具職人が倉庫の乾燥材を貸し、春に同じ本数を返す契約を申し出た。返却日も価格も板へ残した。
木こりたちは、期限と必要本数が見えると自発的に班を組んだ。一本目は梁、二本目は床、三本目は煙突の枠。料理人は昼鍋を、猟師は夜番を引き受けた。ヴェラたちも樹皮を剥いだが、労働を入居条件にはしないとゼフは何度も確認した。
ある日、大工頭が最年長のヴェラへ言った。
「小さい子をまとめる部屋は、どこがいい」
「まとめないで。泣く子を世話するのは、いつも私になるから」
設計は変わった。幼い子の部屋には大人の夜番室を隣接させ、ヴェラには一人で扉を閉められる小部屋を用意した。年長だから親代わり、という見えない役目も取り上げた。ヴェラはその晩、初めて小さい子の泣き声を聞いても、自分の扉を閉めた。隣の夜番がきちんと抱き上げた。
冬至の前日、最後の隙間へ苔が詰められた。村人は祝宴を勧めたが、子どもたちはまず眠りたいと言った。
夜半、外は氷点下まで冷えた。ゼフが煙突を見上げると、細い煙がまっすぐ星へ昇っている。窓の内側には曇りが生まれ、誰かの指が丸を描いた。
翌朝、その丸の中へ文字が増えていた。
――冬至、通過。
家は期限ではなく、これからの季節を数え始めた。