凍った一秒を雪かきする

北境街道の除雪人キュレムは、雪の重さで天気を読んだ。

乾いた新雪、雨を含んだ雪、雪崩の底で固まった雪。騎士には全部白く見えても、彼女のスコップには一つずつ違う。

技能は冬の間しか役に立たないと言われていた。

【除雪:通行を妨げる積雪を取り除き、安全な道を開く。】

春の避難日に、街道が真っ白に凍った。

雪は降っていない。敵の時術師が谷へ杖を振り、橋へ向かう避難民の時間を一秒ごと凍らせたのだ。

空中には落ちかけた雨粒が白い結晶となり、泣く子どもも、荷車を引く馬も、踏み出した姿勢のまま止まっている。凍結した時間が層になって街道へ積もり、後続の人々も前へ進めない。

守備隊の魔術師は結晶を砕こうとした。

一枚割れるたび、その一秒の中にいた誰かの動きまで欠ける。兵の指が消え、馬の呼吸が飛ぶ。これ以上は壊せない。

キュレムはスコップを持って白い層へ入った。

「季節外れだぞ」と隊長が言う。

「道を塞いで積もっているなら、雪です」

彼女が一掬いすると、凍った一秒が板状に持ち上がった。

壊さず、道の脇へ積む。

その下から時間が流れ出し、止まっていた馬の蹄が地面へ着いた。二掬い目で子どもの涙が頬を滑る。三掬い目で荷車の車輪が半回転した。

敵の時術師は凍結を重ねた。白い秒が吹雪のように降る。

キュレムは黙って掬い続ける。雪かきは、降っている間に止めれば負ける仕事だ。

やがて道の両側には、今日失われるはずだった時間が白い壁となって積み上がった。結晶の中では、止まった笑顔や呼吸が傷一つなく眠っている。中央だけ、橋まで一本の黒い路面が通る。

「今です!」

避難民が走り出す。

最後の荷車が橋を渡った瞬間、キュレムは脇へ寄せた時間を谷の外へ返した。積まれた一秒一秒が一斉に解け、敵陣だけに春の豪雨となって降り注ぐ。時術師の杖は濁流に流された。

隊長は勲章ではなく、自分の外套を彼女の肩へ掛けた。スコップの柄では、冬期臨時職の文字が雪解けのように消えていく。

【職業「北境街道除雪人」が上位職「時雪開路師」へ書き換えられました】