十二枚目の宛先
「魔法の宛先だけ読めても、威力も属性も分からぬ。無能は決闘院を去れ」
院長カーヴァンはフィエナの資格札を床へ落とした。
【宛先鑑定:飛行・転移・反射中の魔法が、最終的に到達する対象を表示する】
普通の魔法は見た方向へ飛ぶ。わざわざ鑑定する意味はない。フィエナは資格を失い、観客席の最下段へ追いやられた。
その日の王者決定戦に、鏡魔卿レヴァードが乱入した。
十二枚の空中鏡を展開し、姿を十二人へ増やす。どれが本体か分からず、魔法を撃てば鏡から返って術者を焼いた。氷槍は放った魔術師の肩を凍らせ、拘束鎖は神官自身の両腕へ巻きつく。鏡を布で覆おうとした兵は、別の鏡から現れた自分の槍に倒された。剣聖ジークレアも、反射した雷で片膝をつく。観客席の結界はあと一撃で割れ、その後ろには逃げ場のない三千人がいた。
「物理の剣まで鏡面転移で逸らすか」
剣聖の前で、十二人のレヴァードが同時に笑う。
フィエナは控え術師から、子供の練習用《灯火弾》を借りた。熱も衝撃もない、小さな光だ。
一枚目の鏡へ放つ。
光は三枚の鏡を跳ね、フィエナの袖へ戻った。
――最終宛先:フィエナ。
二枚目も自分。三枚目も自分。鏡魔卿は攻撃も補助も、すべて発射者へ返す結界を組んでいる。
十一枚目まで同じだった。
十二枚目へ灯火弾を放った瞬間、表示が変わる。
――最終宛先:レヴァード。
光は鏡へ入ったまま戻らない。本体が隠れる鏡だけは、像を維持するため魔力を内側へ吸収していたのだ。
「右上、欠けた縁の鏡です!」
ジークレアは目を閉じ、声だけを頼りに剣を投げた。十二枚目の鏡が砕け、中からレヴァードの身体が転がり落ちる。残る十一の像は同時に消えた。
剣先が魔卿の喉へ止まる。
院長は慌てて資格札を拾ったが、ジークレアが先に踏みつけた。金属札は真二つに割れる。
「見れば分かる宛先だったか?」
剣聖は自分の王者章をフィエナへ差し出した。
「十二の嘘の中から、魔法が最後に帰る家を見つけた者に、決闘院の席など狭すぎる。私の魔法参謀になれ」