四人目だけが落ちる夜

四人協力ゲームの最終負荷試験で、四人目だけが崖から落ち続けた。

 同じ足場へ着地しているのに、一人目から三人目は立ち、四人目だけ地面を抜ける。ネットワーク担当の大炊御門透吏に、朝までの修正が任された。

 四人の位置は通信のパケットで送り合う。記録を見ると、四人目の着地だけ一瞬遅れて届いていた。回線の遅さではない。送る量は全員同じだった。

「四人目の通信を優先すれば?」

 企画が言う。透吏は試しに順番を変えた。今度は一人目が落ちた。問題は誰が四人目かではなく、最後に処理される一人だった。

 足場は着地の瞬間に少し沈み、四人分の重さで壊れる仕掛けだ。各端末は同じ乱数シードから揺れを計算し、同じ形を共有するはずだった。だが最後の一人を処理する直前だけ、足場の破壊演出が先に始まり、当たり判定が消えていた。

「壊れるのを一コマ遅らせます」

 プログラマーが直そうとする。透吏は五人目の観戦者を入れた。観戦側では演出が一コマ遅れて見え、映像と音がずれる。遅らせる場所が違う。

 彼は着地人数を数え終えるまで、破壊命令を送らないよう順番を変えた。四人全員の着地を確定し、それから全端末へ同じ番号の破壊命令を送る。通信が遅れた端末では足場を少し長く残し、演出だけ先走らせない。

 透吏は通信の一部を意図的に落とし、二番目の命令だけ届かない状態も作った。端末は次の番号を受けるまで足場を壊さず、遅れた命令を二重に実行もしなかった。

 午前三時、四人が同時に着地した。足場は一度沈み、全員が跳び移った後で崩れた。透吏はさらに一人をわざと遅らせ、途中で回線を切り、復帰させた。それでも誰も地面を抜けなかった。

 テスターが歓声を上げる。

「四人目、救出です」

 透吏は落下回数の記録をゼロへ戻さず、修正前の数字を残した。次の変更で同じ崖が戻ってきたとき、偶然の一回に見せないためだった。

 午前五時、負荷試験の終了通知が出た。直後、八人対戦班から呼び出しが入る。

「九人目の観戦者が入ると、全員空を飛びます」

 透吏は四人分の端末を閉じ、倍の椅子が並ぶ部屋へ向かった。