小箱は毎朝百枚

冒険者組合の受付では、小口の銀貨が毎日消えていた。

羽根ペン、蝋燭、配達料。必要な物ばかりなので、誰も細かく責められない。月末には銀貨三百枚が帳簿より少なく、若い受付係が弁償を命じられた。

礼央は前世で小口現金を管理していた。金庫とは別に、小さな箱へ銀貨百枚だけ入れる。

弁償を命じられた受付係の月給は銀貨十二枚だった。三百枚を返すには二年以上、食べずに働かなければならない。副組合長は「管理できない者の授業料だ」と笑い、自分だけ高価な酒を毎晩飲んでいた。

礼央の小箱は、誰でも中を見られる受付台へ置かれた。百という上限があるため、羽根ペン一本でも残高が変わる。使った者の札がなければ、夕方の足し算が必ず百に届かない。初めの二日は何も起きず、副組合長は無駄な遊びだと嘲った。三日目、八十三で止まった瞬間、受付にいた全員が同時に彼の新しい酒瓶を見た。

「なくなったら足すのではなく、使った証拠と引き換えに、百枚へ戻します」

翌朝から、買物をした者は領収札を箱へ入れた。夕方、残った銀貨と札の金額を足す。

初日。銀貨六十二枚、札三十八枚。合計百。

二日目。銀貨七十一枚、札二十九枚。合計百。

三日目。銀貨五十四枚、札二十九枚。合計八十三。

足りないのは十七枚だった。

副組合長は細かい差だと笑い、今夜まとめて札を書くと言った。礼央は箱の鍵を持つ者を示す。三日目の午後、鍵を借りたのは副組合長一人。彼の机には、値札が銀貨十七枚の新しい酒瓶が置かれていた。

酒屋の札には購入時刻まで残っている。

副組合長は受付係へ罪を被せ、毎日少しずつ酒代を抜いていた。衛兵に連れられると、過去の不足分も私室の酒棚から見つかった。

受付係への弁償命令は破棄された。組合長は小箱へ不足の十七枚を戻し、礼央が用意した札束を全支部へ配る。

「大金庫より、この百枚のほうが嘘を逃がさない」

組合長は会計室の鍵を礼央へ差し出した。

「本日より組合会計長として採用する」