捨てた薬草を探す三つの手
採集士ミナトは、雑草だと思って月白草を捨てた。
討伐後の仲間を救うために必要な希少薬草だった。葉裏の銀線が泥で隠れ、見分けられなかったのだ。
月白草は夜明けの十分間だけ薬効を持つ。ミナトは時間に間に合わせようと百束近くを仕分け、泥を払う余裕がなかった。急いだ結果の失敗なのに、言い訳をすれば採集士としてもっと惨めになると思った。
治療所では負傷者が眠り、窓辺に四人の濡れた外套が掛けられていた。自分の一着だけ持ち去れば、最初から三人の隊だったように見える。ミナトはそう考えて籠を持った。
薬師オフィーリアは残った束を調べ、槍兵ザックは森へ戻り、魔法剣士ユディトは依頼主へ事情を説明しに行った。
ミナトは治療所の裏で、空になった籠を見つめた。
採集しかできない自分が、採集で失敗した。前の村では一度不作を出しただけで畑の鍵を取り上げられた。今度も、籠を置いて消えるのが一番迷惑が少ない。
彼は採集鋏とギルド札を籠へ入れた。
「報酬は三人で受け取ってください」
オフィーリアが泥だらけの手で籠を押し戻す。彼女は治療所の薬棚から空の標本箱を持ってきていた。
「葉裏が見えない時用。次から土ごと入れる」
森から戻ったザックは、折れた槍の先に白い根を絡ませていた。
「捨てた場所を聞く前に走った。大体この辺だと思った」
依頼主のもとから来たユディトは、延期印の押された依頼票を差し出す。
「明日の正午まで待ってもらった。馬車も三人では出さない」
「でも、私が見分けられなかったから」
ミナトが言うと、オフィーリアは月白草の泥を彼の手へ塗った。
「私も束を受け取った時に確認しなかった」
ザックは槍を預け、素手で土を掘り始める。ユディトは外套を脱ぎ、籠の底へ敷いた。
三人の指は薬草探しに向かず、すぐ傷だらけになった。
ミナトは採集鋏を取り戻し、葉を傷つけない位置を教える。籠の持ち手は、四人の手の泥で同じ色になっていた。
夜明け前、四人の手で最後の一株が掘り出された。
空だった籠には月白草と、誰も先に帰らなかった証の泥が一緒に積もった。