断食明けの一口目

大神官メルキオが料理人エネラを聖都から追放した翌日、百日の断食祭が終わった。

鐘が鳴り、神官たちは祝宴の卓へ殺到した。焼いた羊、濃い乳酒、蜜を塗った菓子。最初の一口を待ちわびていた者ほど多く食べた。

半刻後、大礼拝堂は呻き声で満ちた。

腹痛、動悸、意識の混濁。神官たちは毒を疑ったが、すべての料理は清められている。

問題は、清めではなく順番だった。

エネラは毎年、断食明けに薄い豆湯を一匙だけ配り、鐘が三度鳴るまで次を食べさせなかった。次に柔らかな芋、最後に少量の脂。空になった身体へ、急に濃い食事を入れないためだ。

「祭りの日に貧相だ」とメルキオは激怒し、今年から豪華な料理を一斉に出すよう命じた。エネラが反対すると、信仰心がないとして追放した。

その結果、神に近いと称する者たちは、最初の祝宴で立てなくなった。

治癒魔法を浴びせても、過剰に働き始めた胃腸は止まらない。鐘の間隔を守れば防げた症状に、貴重な聖力が消えていく。百日の苦行に耐えた神官団は、待つべき最後の半刻だけを軽んじたために、祭壇まで這って戻ることになった。

聖都の外では、洪水から逃げてきた避難民が臨時の施し所へ集まっていた。数日食べていない者もいる。エネラは一人ずつ脈を見て、豆湯を一匙ずつ渡した。

「もっとくれ」と泣く子にも、彼女は次の鐘まで待たせた。夕方には全員が芋粥を食べ、誰も倒れなかった。

施し所の医師は、彼女へ白い腕章を結んだ。

「空腹の人へ食べ物を渡すだけでは救えない。食べられる身体へ戻す人が必要です。救護食主任を任せます」

夜、聖都から金の馬車が来た。メルキオの侍従が、高圧的に巻物を読む。

「大神官猊下は慈悲により追放を撤回される。明朝までに大礼拝堂へ戻り、神官団を治療せよ」

「私は医師ではありません」

「なら、いつもの順番で食べさせればよい!」

エネラは次の豆湯を待つ人々を見渡した。

「その“いつもの”を信仰への侮辱と断じたのは、そちらです」

彼女は白い腕章に触れた。

「聖都厨房との奉仕契約は、追放門をくぐった時点で終了しています」