星座にならなかった点

展示会場の壁に、碧生は最後の写真を掛けられずにいた。

星空を撮った二十枚。どれも線でつなぎ、物語になる順番へ並べる予定だった。

足元の箱から、高校の天文部で円香と回した観測日記が出てきた。

二人は観測のたび、星を一つ選んで交換日記に点を打った。卒業までに全部を結び、自分たちだけの星座を作るつもりだった。

最後の観測会の夜、円香は来なかった。

数週間前から学校を休みがちで、理由を聞いても「眠いだけ」と笑っていた。碧生は屋上で一人、空を見上げた。途中まで並んだ点を、勝手に線でつないだ。

魚にも鳥にも見えない歪な形だった。

翌日、円香から日記だけが届いた。入院すること、卒業式には出られないことが書かれていた。病名はなかった。

最後に、

〈点は、つながなくても星だよ〉

とあった。

碧生はその言葉を慰めだと思った。二人の高校生活に意味をつけられないまま終わるのが怖くて、卒業後も写真家になり、夜空ばかり撮った。喪失も遠回りも、作品にすれば一つの物語になると信じた。

円香は回復し、今は遠い町で保育士をしている。二人は時折連絡を取るが、あの夜について詳しく話したことはない。円香から届く写真には、園児が紙に打ったばらばらの銀色の星が写っている。碧生は見るたび、線を引きたくなる自分を少しだけ笑った。

今回の展示テーマは〈軌跡〉だった。碧生は二十枚を、出会い、別れ、再生の順に並べようとしていた。けれど一枚だけ、どこにも収まらない写真がある。雲に半分隠れた、小さな星だ。

観測日記を開くと、円香が打った最後の点も、線から外れていた。

その孤立は失敗ではない。ただ、そこにあったという記録だった。

碧生は写真を順番の外、出口近くの壁へ一枚だけ掛けた。説明文はつけなかった。

すべてをつなげなくても、過去は消えない。意味にならない夜も、自分の一部として持っていける。

照明を落とすと、まだ名前のない小さな孤独の星が、いちばん先に浮かび上がった。