最終便は心臓部まで

《走者ナオのコラボ相手が宅配員?》

《迷宮列車は停車駅ゼロ、追いついても乗れない》

《荷物一個のために災害級へ並走するな》

人気耐久配信者・瀬名直央は、暴走する迷宮列車の屋根を駆けていた。車内には百人の探索者が閉じ込められ、先頭車両は壁の向こうにある終点へ突進している。並走する宅配員・早乙女駆は、胸に一通の封書を抱えていた。

「駆、その手紙の届け先は?」

「この列車の運転士です」

「運転士は十年前からいない!」

「だから、まだ配達が終わっていません」

直央が車両の継ぎ目を飛び、駆の腕を引いて屋根へ乗せる。

《列車自体が魔物、運転席は擬態》

《核は走行中ずっと車両間を移動する》

《宛先不明なら配達スキルも発動しないぞ》

駆は屋根へ膝をついた。封書には、かつてこの列車を作った技師から『最後の勤務を終えた運転士へ』とだけ書かれている。十年間、配達不能として倉庫に眠っていた手紙を、直央が今日ここまで運ぶ道を作ってくれた。駆は風圧の中で封書を一度だけ前へ差し出した。

「お届け先まで、最短経路で参ります」

配達印が光る。

二人と封書は屋根から消え、次の瞬間、列車の心臓部へ立っていた。そこには運転帽をかぶった小さな核が、十年間待ち続けるように脈打っている。

駆が封書を渡すと、核は静かに開いた。直央は中の停止鍵を抜き、一回転させる。百両の車輪が同時に止まり、列車は終点の壁の一寸前で停止した。

「運転士って、核そのものだったのか」

「宛名は肩書きでも届きます。受け取るべき人が、まだ仕事を終えていない限り」

《転移ログ、移動する核を一発で追尾》

《直央が配達員を列車へ乗せ、駆が直央を核へ届けた》

《最速走者と最短配送、相性が良すぎる》

直央は停止した列車の屋根へ戻り、駆の配送帽をかぶって百人へ手を振った。

「次の最終便も一緒に走ろう。ゴールじゃなく、届け先まで」

画面上部に新記録が刻まれた。

【迷宮列車停止・乗客百名全員生存――共同配達時間 四分〇二秒】