朝食に人狼を出します

雪山のペンションで人狼合宿が開かれた。

夜のゲームが終わった後、参加者の一人が厨房から主人夫婦の会話を聞いた。

「明日の朝食、人狼を出そう」

「全員の前で?」

「驚くだろうね。逃げないよう、入口は閉めておく」

参加者は食堂へ戻り、声を震わせた。

「明朝、本物が出る」

「本物の人狼?」

「主人がそう言った。入口も閉める」

「今夜のゲームは選別だった?」

「誰が人狼役だったか、覚えてる?」

全員が、最後まで生き残った男性を見る。

男性は両手を上げた。

「カードで人狼だっただけです」

「主催者が本物を役へ誘導した可能性」

「そんな精密なカード配布が?」

一同は男性の行動を検証した。

「夕食で肉を三枚食べた」

「おかわり自由だった」

「窓の外を何度も見た」

「雪が珍しかった」

「歯が少し尖っている」

「八重歯です」

「説明が全部自然なのが不自然」

男性は客室へ隔離され、ドアの前に椅子を積まれた。

「朝までここにいて」

「トイレは?」

「窓から」

「二階です」

「人狼なら降りられる」

「人間だった場合を考えて!」

別の参加者が主人へ探りを入れた。

「朝食の主菜は?」

「秘密です」

「生肉ですか」

「焼きますよ」

「銀の食器は?」

「ありません」

「ニンニクは?」

「少し使います」

「弱点を少しだけ混ぜるつもりだ」

夜明けまで誰も眠らなかった。

朝七時、食堂の入口が閉められ、照明が消える。

参加者たちは椅子を武器に構えた。

主人がカーテンを開く。

テーブルには、狼の顔をかたどったパンケーキが人数分並んでいた。目はブルーベリー、牙はバナナ。

妻が言う。

「人狼合宿限定の〈人狼モーニング〉です。暖房を逃がさないよう入口を閉めました」

隔離されていた男性が遅れて入ってくる。

「僕の朝食は?」

主人は一番牙の大きい皿を渡した。

隔離に使われた椅子は、全員で元の食堂へ戻した。

主人が尋ねる。

「今夜も人狼をしますか」

男性はパンケーキの耳を切りながら答えた。

「次は朝食の献立を先に公開してください」

夜通し疑われた人狼役は、誰より甘いシロップをかけた。