村祭りの防衛演武

収穫祭の防衛演武で、ケナジオの相棒は七十歳の民兵チヨノだった。

チヨノは村一番の鐘叩きで、魔物が来れば誰より早く避難鐘を鳴らす。だが視察に来た領主は、腰の曲がった彼女を見て笑った。

「戦えぬ老人を兵に数えるとは、税を免れるための水増しか」

村長が反論する前に、領主は予定を変えた。模擬矢を使うはずの演武へ、本物の攻城弩を運び込ませる。

「盾役が優秀なら問題あるまい。仲間を守ってみせろ」

チヨノは祭り用の団子盆を持ったまま、ケナジオの背後へ立った。ケナジオは古い丸盾を地面へ置き、両手を空ける。

二十年前、夜襲を知らせたのもチヨノだった。見張り台の兵が眠る中、畑の異変に気づき、矢が飛ぶまで鐘を叩き続けた。その鐘で村中が逃げ延びたのに、領主の戦功記録には老女の名が一行もない。ケナジオは子供のころ、その鐘に救われた一人だった。

民兵隊長はチヨノへ、今からでも列を離れろと囁いた。彼女は団子盆の下から鐘の撥を見せる。『鐘叩きが逃げたら、誰が皆を逃がすんだい』。ケナジオは笑って一歩前へ出た。守られる者が役立たずなのではない。役目を果たす時間を作るのが盾の役目だった。

第一射。丸太ほどの矢が飛び、爆煙と土塊が広場を覆った。屋台の布が裂け、領主は面白そうに扇を開く。だが煙の中から、鐘ではなく小さな咀嚼音が聞こえた。

チヨノが団子を食べている。

煙が晴れる。ケナジオは両手を広げた同じ姿勢で立ち、チヨノは背後で二本目の串を選んでいた。団子の餡さえ盆から垂れていない。攻城矢はケナジオの胸前で縦に割れ、左右へ落ちていた。

村人が笑いと歓声を上げる。領主は頬を赤くし、護衛の制止を振り払った。

「古い矢が腐っていたのだ! 新型を撃て!」

魔獣の腱を束ねた弩へ、鋼芯爆裂矢が装填される。城壁を二枚抜く二射目が煙の尾を引いた。ケナジオは動かず、チヨノは彼の肩越しに団子を一本差し出す。

矢が掌へ触れた瞬間、鋼芯へ逆向きの亀裂が走った。弩の腱まで悲鳴を上げ、領主が発射台から手を離す。

攻城弩は中央から砕けた。