梁の下に灯るもの
オーウェンが廃屋へ入ったとき、中央の梁が低く唸った。
見上げると、古い樫材に長い亀裂が走っている。今すぐ落ちるほどではない。だが雪が積もれば、屋根ごと折れる。壁や窓を直しても、梁が崩れればすべて無駄になる。
元王室密偵のオーウェンは、危険な音を聞き分けるのが得意だった。床板の軋み、人の呼吸、鞘から刃が離れる音。任務を断って消されたことになっている彼には、静かな廃屋がよく似合った。
今日直すのは、梁の亀裂一つだけ。
梁には古い刃物の跡がいくつもあった。誰かが何年も前、同じ亀裂を板一枚で隠そうとしたらしい。オーウェンは隠す板を外し、傷んだ場所を光の下へ出した。見えないことと、安全であることは違う。
彼は森から若い樫を切り出さず、納屋に残った古い車軸を選んだ。十年荷重に耐えた木なら、見た目の新しさより信用できる。車軸を縦に割り、亀裂の両側へ添える形に削る。
一人で梁を持ち上げるため、縄と滑車を組んだ。柱へ体重を預け、少しずつ締める。暗殺なら一息で終える。家を直す仕事は、急いだ者から失敗する。
亀裂が閉じたところで、木栓を打つ。一本、二本、三本。最後に鉄帯を巻き、楔を叩き込んだ。
鉄帯の結び目は、密偵が捕縛を解くために使う逆向きの締め方にした。引かれるほど強く閉じる。人を縛るため覚えた技が、初めて屋根を守るために役立った。
梁の唸りが止まった。
オーウェンは滑車を緩め、しばらく待った。屋根は落ちない。梁は新しい添え木と一緒に、黙って重みを受けている。
その真下に食卓を移し、梁から油灯を吊った。小さな火が灯ると、暗かった部屋の隅が一つずつ現れた。鍋の兎肉は柔らかく煮え、蓋をずらすと胡椒の湯気が上がる。
窓の外で、夜鴉が三度鳴いた。王室密偵だけが使う合図だ。敷居には黒い封書が置かれている。
『最後の任務。完遂すれば身分を戻す』
オーウェンは封書を拾い、灯りの届かない戸棚へ入れた。身分より先に戻ったものがある。火の下で食事をする習慣だ。
匙で肉を崩すと、ほろりと繊維がほどけた。
闇の中で命令を読む代わりに、オーウェンは補強した梁の下で、灯りに照らされた夕食を選んだ。