潮を待つ鮫歯
夜明けの礁で、タウロ・マヒナは鮫歯の棍棒を海へ浸した。
木の縁に並ぶ白い歯が、波を受けて鈍く光る。かつて島王の近衛だけが持った武器だった。王が海戦で死に、タウロとケア・ロアは別々の島へ流れた。タウロは王へ退却を勧め、ケアは敵船へ乗り移れと叫んだ。王はケアの策を選び、槍を受けた。タウロは臆病者と呼ばれ、ケアは王を死なせた勇者と呼ばれた。どちらの名も、主を失った後には飯にならなかった。
今朝、連合の戦舟に乗れる案内人は一人だけだった。敵は外海の浅瀬に石杭を沈めている。水路を一筋誤れば、五十艘の腹が裂ける。勝者は先頭船に立ち、最初に矢を受ける。敗者は浜に残り、出ていく舟の数を数える。どちらが罰かは、海に背を向けられない二人には決められなかった。浜の子供たちは、二人を昔の英雄として知らない。ケアはその方がよいと思っていた。敗れた王の話は、若い漕ぎ手の腕を重くするだけだった。
決闘の場は、引き潮で現れた黒い礁。円も柵もない。海へ落ちるか、武器を失えば負けだ。
ケアは乾いた高みを取った。タウロは低い波打ち際に立つ。
「昔から、場所を選ぶのが下手だ」
ケアが言った。
「場所は潮が選ぶ」
一合目、ケアの棍棒がタウロの肩を裂いた。鮫歯は布より肉をよく噛む。二合目、タウロは後退した。三合目も退き、波の来る低みへ誘うように見せた。
ケアは勝ちを急いだ。連合の大舟では出帆の貝笛が鳴っている。
沖で大きな波が一つ崩れた。
タウロはそれを見て、さらに半歩下がった。
ケアが踏み込む。足の下は黒い海藻に覆われていた。引き潮の間は乾いていたが、戻った最初の波が薄い膜を作る。
白波が二人の脛を打った。
ケアの踵が滑る。棍棒の先が空へ跳ねた。タウロは鮫歯で刃を受けず、木の柄だけを打った。ケアの武器が礁を滑り、海へ落ちる。
タウロの棍棒は、倒れたケアの額で止まった。
「波を数えていたのか」
「おまえの足を数えていた。波は数えなくても戻る」
タウロは手を差し出した。ケアは取らず、自分で起きた。
岸の長老が貝笛を三度鳴らした。
沖の戦舟で、赤い三角帆が一斉に上がった。