炉心婚約と三つの金槌

炉心を爆発させた鍛冶師ブロムは、山岳王国への賠償として王女との婚約を命じられた。結婚すれば王室工房へ終身拘束され、二度と自由鍛冶場へ戻れない。

婚約式の大炉前で、ブロムは髭を整えられ、金の金槌を持たされた。爆発で町の暖房が三日止まった。仲間たちは凍えながら復旧した。自分を追い出して当然だと思った。幼い見習いの頃、親方は一度炉を消した弟子をその日のうちに谷へ降ろした。鍛冶場とは、失敗を二度許さない場所だとブロムは信じてきた。三人が復旧後に何も言わなかった沈黙も、追放の準備だと受け取っていた。王室は自由鍛冶場の看板を外し、婚約祝いとして金色に塗り替えた。ブロムは自分の名が消える音を、釘を抜くたびに聞いた。

誓約の鐘が鳴る前、石工ダグニが自分の金槌を大炉の縁へ置いた。

「石工組合の合鍵つき。寝床が要るなら壁ごと増やす」

酒造家フェイラは祝宴席から長椅子を一本運び、ブロムの隣へ樽を置いた。

「醸造所の夜番席。飲まなくても座ってよし」

坑道口では森人オズロが鉱山車を止め、車輪の留め具を外して懐へ入れた。

「おまえが乗るまで動かん。王家でも押せん」

王室技師が三人を笑った。だがダグニの金槌で炉壁を叩くと、内部から王家の刻印が入った冷却弁が落ちる。爆発はブロムの設計ミスではなく、王室が工房を接収するため弁を逆向きに交換した工作だった。

王女は事情を知らず、即座に婚約を拒否した。技師は拘束され、自由鍛冶場は返還される。

潔白になったのに、ブロムは金の金槌を手放せなかった。炉の音を聞き違えた自分の鈍さは残る。次に本当に爆発させれば、三人の家まで吹き飛ばすかもしれない。

「また、炉を壊すぞ」

ダグニは合鍵を回収せず、フェイラは樽の栓を抜き、オズロは留め具をさらに奥へしまった。

「壊れたら、石と酒と木で直す」とダグニ。

ブロムは王家の金槌を置き、三人の道具を順に見た。石工場、醸造所、森の坑道。どの戸口にも彼の椅子があり、結婚で一つに縛られなくても、帰属先は三つもあった。