煙突から三人
クリスマス・イブの深夜、穂積家の居間にサンタクロースが三人集まった。
一人目は、児童施設へ玩具を配る途中の警察官、柚木崎漣。
二人目は、借金の回収を隠すためサンタ姿になったマフィアの赤銅ジーノ。
三人目は、煙突から入って銀食器を盗もうとした泥棒、菱喰ちか。
赤い服と白いひげのせいで、暗闇では区別がつかない。
「予定より二人多いな」とジーノ。
「応援要員ですか」と漣。
「分け前が減るんだけど」とちか。
三人は、残り二人も同じ仕事の仲間だと思った。
ジーノが大袋を暖炉脇へ置く。
「まず回収する。抵抗したら縛れ」
漣は、子どもが起きた場合の安全確保だと受け取った。
「優しくお願いします。怖がらせないように」
ちかは住人を拘束する相談だと受け取った。
「口には何を詰める?」
「キャンディーならあります」と漣。
「甘い拷問だな」とジーノ。
「拷問?」
「歯に悪いという意味だ」
ちかは食器棚を開けた。
「銀のものは袋へ入れていい?」
「寄付品なら」と漣。
「借金の足しになるなら」とジーノ。
「話が早い」
銀のポット、燭台、スプーンが次々とちかの袋へ入る。
漣が違和感を覚えた。
「プレゼントを置くのでは?」
「私は取りに来た」とジーノ。
「私も」とちか。
「サンタは配る側です」
「赤字経営になるだろう」とジーノ。
「毎年よく続くよね」とちか。
漣は二人の袋を見せるよう求めた。
自分の袋には玩具と絵本。ジーノの袋には未払い金の帳面と催促状。ちかの袋には穂積家の銀食器。
「説明してもらえますか」
「サンタ同士、秘密は守れ」とジーノ。
「身元を隠して入る仲間でしょう」とちか。
「私は警察官です」
漣が付けひげを外し、警察手帳を見せた。
二人が別々の窓へ走ろうとしたとき、階段の灯りがついた。
七歳の穂積あまねが眠そうに立っていた。
「サンタさん、三人いるの?」
漣は二人へ手錠をかける。
「一人は配達、二人は回収です」
「何を回収するの?」
「悪い大人」
あまねは納得して、枕元へ戻った。
「今年は大きい袋が必要だね」