理由を書かない欠勤

初音は、休む連絡に長い理由を書いた。

頭痛ならいつから痛いか、腹痛なら薬を飲んだ時刻まで。詳しく説明すれば、仮病だと思われない。迷惑をかけるぶん、苦しさを証明しなければならない気がした。

コンビニの夜勤を終えた翌朝、初音は布団の中で震えていた。熱はない。喉も痛くない。ただ体が鉛のようで、夕方からの勤務を考えると息が浅くなった。六連勤の最終日。あと一日行けば休みだった。

店長へ連絡する画面を開く。

《昨夜から体調が悪く、今朝も改善せず》

そこまで書いて、具体的な症状がないことに焦る。疲れた、では弱い。眠れない、では自己管理不足と思われる。初音は「吐き気」と書き足した。嘘ではない気もした。起き上がろうとすると胃が縮む。

代わりの人を自分で探すべきだと思い、スタッフの一覧を開く。誰もが学校や別の仕事を抱えている。初音が休めば、誰かの予定が壊れる。その想像だけで、制服に着替えたほうが楽に思えた。

ベッドの脇には、昨日買ったおにぎりが袋のまま置いてある。食べる気力がなく、朝になってしまった。初音はそれを見て、欠勤の理由にできるほどの病気でなくても、働ける状態ではないと初めて考えた。

メッセージを全部消す。新しく、

《本日の勤務を休ませてください》

とだけ書いた。

指が止まる。理由がない。反省もない。代わりを探す約束もない。これではただ休みたい人に見える。実際、ただ休みたかった。

初音は送信した。

一分後、店長から《了解。こちらで調整します》と返ってきた。追加の質問はなかった。

安心した途端、今度は休みを有効に使わなければと思った。部屋を片づけ、役所へ行き、買い物をする。欠勤した一日を生活の立て直しに使えば、ただ怠けたことにはならない。

初音は予定アプリを開き、いくつか項目を入れた。けれど最初の「洗濯」を見たまま、スマートフォンを伏せた。今日を有意義にする説明まで用意する必要はない。

カーテンを閉め、制服のシャツをハンガーに戻す。おにぎりは冷蔵庫へ入れた。眠れるかどうかは分からない。それでも初音は、苦しさを詳しく証明する文章も、休んだ価値を証明する予定も作らず、布団へ体を沈めた。