画面を暗くしたら氷鳥が消えた

「氷炎鳥は光がある限り再生する」

「松明を全部消しても自分が発光するんだぞ」

「東雲凪、照明設定いじってる場合か?」

東雲凪は《永久薄明の塔》の最上階で、配信画面の明るさを確認した。

氷炎鳥アルバは、視界に一つでも光源がある限り何度でも蘇る。火を消せば羽が青白く光り、その光を種に復活する。暗闇魔法を使っても、術者がボスを認識できなくなり先に凍らされる。光を消す役と、とどめを刺す役が別に必要だと考えられていた。

凪の固有スキル《露出固定》は、撮影範囲の明るさを設定値へ揃える。

人気が出た理由は、洞窟でも顔がきれいに映るから。戦闘配信者からは“美容枠”と呼ばれ、攻略募集に応募しても返事すら来なかった。それ以上の価値を、誰も探さなかった。

氷炎鳥が翼を広げる。青い光が凪の頬を美しく照らし、自動美肌補正の通知が皮肉のように点滅した。彼女はそれを切る。今日、きれいに映る必要があるのは自分ではなく、ボスが消える瞬間だけだった。

青い火の粉が塔を満たし、触れた石柱を瞬時に凍らせた。凪は武器を抜かず、カメラを鳥の全身が収まる位置へ置く。

「露出を下げても映像が暗くなるだけ」

「待て、スキル範囲は“撮影範囲の明るさ”」

「現実側の光量まで固定するのか?」

アルバが急降下する。

凪は設定値の数字を《0》へ合わせた。美容のためには決して選ばない、完全な黒。その値を一度だけ確定する。

光が消えた。

松明も、魔法陣も、鳥自身の青い炎も、撮影範囲の内側だけ完全なゼロになる。配信は暗転したが、音だけが残った。翼が一度はためき、次に薄い氷が割れる音がする。

三秒後、凪は設定を自動へ戻した。

塔には朝の光が差し込み、床には透明な羽根が一枚だけ落ちている。再生の種にする光を、自分の体からも奪われた氷炎鳥は、暗闇の三秒を越えられなかった。

「攻撃なし、露出変更だけ」

「ボスの発光まで照明扱いでゼロ化」

「暗転中の生命反応、完全消失」

「美容スキルで不死鳥を消した……」

復帰した画面の中央へ、公式認定が白く浮かぶ。

【世界初:完全無照明状態での氷炎鳥・単独討伐】