石を運んだだけの男

運搬役ウードは、洞窟へ入るたび拳ほどの石を拾い、壁の亀裂へ押し込んだ。

「宝ではなく石を持ち帰るつもりか」

双剣士キルガが笑う。討伐対象は地下を泳ぐ鎧蚯蚓。戦果盤の仮寄与率は1%で、ウードは武器すら持っていなかった。

洞窟の奥で鎧蚯蚓が現れる。刃は硬い節に弾かれ、怪物は傷つくとすぐ岩の中へ潜った。天井も床も揺れ、どこから出るか分からない。

ウードは戦闘を見ず、また亀裂へ石を詰めた。

「逃げ道を塞いでいる場合か!」

キルガが怒鳴る。

洞窟は巨大な肺のように、怪物が動くたび空気を吸っていた。亀裂は鎧蚯蚓が地中を進むための通気口だ。ウードは湿った苔の揺れから空気の流れを読み、外側の穴から順に塞いでいた。

怪物が潜る。

今度は地中で長く暴れた。通気口を失い、進める道が狭まっている。ウードは最後まで残した亀裂の前へ、拾った石を積んだ。

「ここから出ます」

双剣士は疑いながら構える。次の瞬間、亀裂が弾け、鎧蚯蚓が頭から飛び出した。

石の山に顎を乗り上げたせいで、柔らかい腹が上を向く。全員の武器がそこへ突き立った。怪物は潜ろうとしたが、塞がれた通気口へ身体を押し込めず、そのまま討ち取られた。

帰還後、キルガは「動きを読んで弱点を露出させた」と報告した。ウードの行為は通路整理と記録された。

戦果盤が洞窟内の空気の流れを再現する。怪物の移動範囲は石が詰められるたび狭まり、最後にはウードが残した出口へ導かれていた。双剣士の予測は、怪物が現れた後に構えただけだと示される。

「石を運んだだけだろう」とキルガが呟く。

ウードは空の背負い籠を下ろした。

「はい。必要な場所へ」

討伐隊の戦士たちは、次の洞窟図ではなく石の入った籠をウードへ差し出した。キルガが先頭へ立とうとしても、誰も続かない。どこを塞ぎ、どこを残すか決まるまで、鋭い双剣も抜かれないままだった。

籠の石の重みが、その日から剣より先に作戦の価値を決めた。

【再算定完了】

【ウード・討伐寄与率:1% → 96%】

【隊内順位:最下位 → 首位】

【役職更新:運搬役 → 地脈封鎖官】