砂竜の雛と最後の一杯

砂嵐の中心から、幼竜が転がり出てきた。

隊商の護衛たちは、砂竜が嵐を起こしたと剣を抜いた。水樽は底をつきかけ、誰もが苛立っている。商隊長は討てば嵐が止むと叫んだ。

帳簿係のパメラは、幼竜の鼻を見た。

彼女が一滴単位で配水を記録するため、仲間からはけちと嫌われている。けれど残量を正しく数えたから、全員が今日まで水を切らさず来られた。最後の一杯の価値も、誰より分かっていた。

小さな鼻孔が固い砂で塞がり、口を開けて必死に息をしている。翼をばたつかせるたび風が巻き上がり、それがさらに砂を呼んでいた。

「この子も嵐から逃げてきたんです」

「水一杯にも値をつけるお前が、竜へ情けをかけるのか」

隊長の嘲りに、パメラは腰の水筒を外した。残っているのは、自分に割り当てられた最後の一杯だけだった。

乾ききった喉へ直接流し込めば、きっとむせる。彼女は首巻きの端へ水を含ませ、幼竜の鼻先へ当てた。乾いた舌が布を舐める。抵抗しないのを確かめ、砂の塊を外側から湿らせた。

少し待ち、柔らかくなったところを指で崩す。

一つ目の鼻孔が開いた。幼竜が大きく息を吸う。パメラの指へ鼻先を寄せたので、彼女はもう片方も触れてよいのだと知った。二つ目も同じように掃除すると、くしゅん、と可愛らしいくしゃみが出た。

吹き飛んだ砂が隊長の顔だけを覆う。

護衛たちが笑いを噛み殺す中、周囲の風が止まった。砂の壁が崩れ、青空と進むべき街道が現れる。

幼竜はパメラの空の水筒を鼻で押し返した。そこへ前足を重ねると、内側から澄んだ水が湧き出す。砂竜は地下水脈を探す神獣だという古い記録を、彼女だけは帳簿の余白で読んでいた。

商隊長が手を伸ばす前に、幼竜はパメラの日傘の下へ潜り込んだ。

砂色の背は日向の石のように熱く、腹側は驚くほど柔らかい。靴の上へ載せられた丸い顎は小さな水樽ほど重く、その重さが、彼女の差し出した一杯を何倍にもして返していた。