裏方専用の貢献帳

災厄級ボスを倒した瞬間、討伐隊長は戦利品の核を自分の袋へ入れた。

「とどめを刺した俺の物だ」

歓声の陰で、補助術師ジルは杖にもたれた。彼が一晩中張った耐性結界、毒の中和、武器への強化は、戦果画面に一つも表示されていない。隊長はジルの報酬を銅貨三枚と決め、用済みだと追放を告げた。

だが、ボスの死骸が脈打ち始める。

核は討伐への最大寄与者が触れなければ安定しない。偽の所有者へ渡ったため、災厄が復活しようとしているのだ。あと一分で町を覆う毒霧が戻る。

ジルの視界にだけ、閉じた本の印が現れた。

《条件達成:記録されない支援を一万回成功させた者》

《主人公専用排出枠〈貢献〉》

《一度だけ、隠れた働きを記録する道具を排出します》

引くと、表紙のない薄い帳面が落ちた。

《裏方帳》

《結果に至るまでの全行為を、因果単位で記帳する》

「数字遊びをしている暇はない」と隊長が核を剣で叩く。

ジルが帳面を開くと、白紙へ文字が走った。剣士の最終打撃、三%。弓手の拘束、五%。隊長の号令、一%。そして耐毒結界、攻撃補助、傷害分散、退路維持――ジル、八十七%。

帳面の数字は報酬表だけでなく、世界の所有判定へ反映された。隊長の袋から核が飛び出し、ジルの手へ収まる。

彼は核を握って、帳面の最後の行に「討伐完了」と記す。

膨らんでいた死骸が静かにしぼみ、毒霧は逆流して核へ吸われた。町を覆っていた紫の雲まで晴れ、倒れていた住民の呼吸が戻る。報酬箱も自動的に開き、金貨と装備が寄与率どおり各自の前へ分配された。

隊長の前には銅貨三枚だけが転がる。

「待て。お前はうちの補助術師だ。核を返せ」

「たった今、用済みだと契約を切られました」

ジルは契約終了通知を見せ、町の治療師たちの方へ歩く。彼らは核を防壁の動力に使ってほしいと頼み、報酬と役職を先に明記した契約書を差し出した。

帳面の表紙が黄金に形成され、最後に一行が追加される。

《世界級記録具〈因果決算書〉》

《世界初可視化:討伐寄与率八七%》

《役職更新――追放補助術師から、災厄討伐主担当へ》