赤い荷を十八分で

包囲戦のさなか、補給車八十台が白岩砦へ殺到した。

門は一台ずつしか通れない。先頭には将軍の寝台、次に葡萄酒、その後ろに小麦。矢束と止血布を積んだ車は六十台目で、城壁では矢が残り三十本、治療所には布が一巻しかなかった。

補給副官は「到着順を崩せば混乱する」と門を閉じた。舟木志摩は車列を走り、今すぐ戦闘に要る十二台の御者へ赤い布を結んだ。

「赤だけ、右の空き地へ」

寝台の御者が怒鳴ったが、志摩は門番へ赤布の車だけを先に通すよう命じた。十二台は長い列から抜け、空き地を回って門前へ並ぶ。

最初の矢車が入るまで六分。止血布は十一分。十二台すべてが砦内へ入ったのは十八分後だった。

城壁へ矢束が届き、空だった矢架が二千本で満ちる。治療所では布を切る音が続き、出血していた騎士の脈が戻った。

志摩は赤布を欲しがる御者へ、条件を三つだけ示した。今すぐ戦闘に使うこと、遅れれば人命か防衛線を失うこと、砦内の受取人が待っていること。将軍の寝台も高価な葡萄酒も、その三つに当てはまらない。声の大きい者ではなく、止めた結果の大きい荷だけが列を抜けた。

十二台の荷札は門内で矢、治療、火消しの三か所へ直接渡され、広場へ仮置きされなかった。緊急荷を先に抜いたことで通常列の中身も揃い、残る六十八台の仕分け時間は一台あたり二分短縮された。

戦後の集計では、優先しなければ失われたと見積もられた矢倉一つと騎士十九人が残った。赤布十二本の値段は銅貨六枚だった。

残る六十八台は、赤い荷が消えたあと順に入った。寝台も葡萄酒も失われていない。むしろ門前で荷の用途が分かれたため、全車の入城も従来見積もりより一刻早く終わった。

夕刻、敵の突撃は矢雨で退いた。将軍は無傷の寝台へ座らず、志摩が結んだ赤布を机へ置いた。

副官が「軍規にない色分けです」と抗議する。

将軍は残り三十本だった矢の報告と、十八分の受領時刻を並べた。

「今日、砦を守った軍規はこれだ」

赤い布が補給優先章として志摩の腕へ結ばれた。

「全軍の緊急輸送を任せる。何を先に通すかは、君が決めろ」