追放された荷物持ち
猫屋敷ノルが除名された瞬間、後方の団長たちが一斉に地面へ沈んだ。
《共有重量》
ギルド所有アイテムの総重量を、在籍メンバー全員で均等に負担します。
ノルは荷物持ちとして、竜骨や金塊を自分の背負い袋へ詰め込まれていた。表示上の重量は一人あたり二十キロ。団長たちは身軽なまま、彼女だけが大袋を背負って歩く姿を笑っていた。
最終坂で団長が言う。
「報酬前に切る。荷物ごと置いていけ」
除名。
ノルの肩から重さが消える。袋はギルド所有のため、彼女の所持品から外れた。総重量二百キロが、残った五人へ再分配される。
一人四十キロ。
団長たちは坂で動けなくなった。さらに、ノルが個人所有だと思われていた大袋自体も、購入費をギルド金庫から出していたため共有資産だった。袋の重量百キロが追加される。
一人六十キロ。
背後から溶岩が迫る。
「戻れ! 再加入させてやる!」
ノルは身軽な身体で坂を上る。再加入すれば重量は六分され、彼らを救える。だがまた荷物持ちにされる。
彼女はギルドへ戻らず、袋の所有権放棄を提案した。
「金塊を捨てれば走れる」
団長は拒む。残り四人は次々賛成し、過半数で共有資産が放棄される。金塊と竜骨が溶岩へ落ち、重量はゼロになった。
団長だけが、個人枠へ隠していた宝石の重さで遅れる。ノルは一度戻り、彼の腕を掴んだ。宝石を手放すまで引かない。
《共有重量:0》
《全生存者が坂を踏破》
《ギルド資産獲得:なし》
溶岩から逃げ切った後、団長は「財宝を捨てさせた」とノルを責めた。だが残った四人は、背中が軽いことより、自分が何を運ばされていたか初めて知ったことを話した。
共有重量は公平に数字を割っただけだった。大袋を背負う姿が一人だったため、皆がその人だけの荷物だと思い込んだ。
ノルは新しいギルドへ誘われたが、条件を一つ出す。
《共有重量は、全員の画面中央へ表示する》
見えない負担ほど、一人へ押しつけやすい。数字を分けるだけでなく、重さの出所も共有するためだった。
《攻略報酬を訂正――持ち帰った財宝ではなく、誰か一人へ重さを押しつけず帰還した人数》