集荷は十八時
柊は、元恋人の冬服を三箱に詰めた。
別れたのは五月なのに、コートも手袋も部屋に残されたままだった。取りに来ると言われるたび、予定を空け、前日に延期された。
妹の椿希は、会わずに送れと言った。
「最後くらい話したい」
「何を?」
「ちゃんと終わったって確認したい」
「向こうは、荷物を置いて終わらせてないだけ」
椿希は言い方が鋭い。柊は、人の事情を切り捨てすぎると思っている。
それでも箱を閉じる作業は二人でした。椿希が服を圧縮袋へ入れ、柊がポケットを確認する。映画の半券、乾いた飴、柊の家の古いスペアキーが出てきた。
「ほら」
椿希が鍵を掲げる。
「返すつもりだったのかも」
「返してない事実は同じ」
柊は鍵を机へ置き、服とは別にした。
集荷を十八時に予約すると、元恋人から「今夜なら会える」と連絡が来た。
柊の胸が跳ねた。椿希は画面をのぞかず、箱の重さを量っている。
「来てもらったほうが送料かからない」
「そうしたい?」
「分からない」
「じゃあ、集荷は止めない」
箱の側面には、椿希が「冬物」とだけ書いた。柊は「大切な物」と足そうとしてやめ、壊れ物ではない欄へ丸をつけた。
十七時五十分、柊はまだ返信を書いていた。謝りたいこと、聞きたいこと、返してほしい言葉。どれも送信前に長くなった。
チャイムが鳴る。配達員だった。
椿希が一箱目を持ち上げ、柊は反射的に二箱目を持った。二人で玄関を往復する。
最後の箱を渡すとき、柊はスマートフォンを床に置いた。
荷物がエレベーターへ消えたあと、椿希が古いスペアキーを指さした。
「それは?」
「捨てる」
「金属の日、来週」
「今捨てたい」
「分別は守る」
柊は腹を立てながら、鍵を小袋へ入れ、回収日を書いた。椿希は袋の口を縛った。
元恋人への返信は、「荷物を発送しました。追跡番号はこちら」だけに直した。
柊が送信し、椿希が伝票の控えを冷蔵庫へ磁石で留める。
二人は終わり方を同じとは思っていない。
それでも十八時の欄に、同じペンで一本の線を引いた。