雨の終業式

終業式の日だけ、天気予報が外れた。

朝は雲一つなかったのに、最後のホームルームが終わるころには空が暗くなり、昇降口へ着いた瞬間、校庭が白くなるほどの雨が降った。

傘を持っていたのは、味方冬真だけだった。

「駅まで入る?」

そう言って広げたのは、折り畳みの小さな紺色の傘。二人で入れば、どちらかの肩は必ず濡れるほどだった。私は一度断ったが、雨宿りする生徒で昇降口はいっぱいだった。背後から押されるように、傘の下へ入った。

終業式が終わった解放感で、みんな妙に浮かれている。傘も差さずに走る者、水たまりへ跳ぶ者、鞄を頭に載せる者。私たちはその横を、肩をぶつけながらゆっくり歩いた。

冬真は傘を私の方へ傾ける。

「そっち濡れてる」

「味方の方が濡れてる」

「俺は近いから」

「何に」

「夏に」

意味が分からず笑うと、冬真も笑った。いつも教室では冗談ばかり言うのに、傘の下では声が近すぎて、返事をするたび少し緊張した。

校門を出たところで、大きな水たまりが道をふさいでいた。私は端を回ろうとした。冬真は突然、傘を閉じた。

「走るぞ」

「なんで閉じるの!」

「もう半分濡れてる」

手首をつかまれ、水たまりを飛び越える。着地で失敗し、二人とも靴まで濡れた。傘を持っている意味がなくなり、私たちは駅まで走った。

ホームへ着くころ、雨は嘘みたいに弱くなった。制服から水が滴り、髪は頬に張りついている。冬真が笑いながら、スマートフォンを向けた。

「夏休み一枚目」

「最悪の顔」

「最高じゃん」

撮られた写真には、目を細めて笑う私と、傘を持ちながらずぶ濡れの冬真が写っていた。背景の空だけが、雲の切れ間から青くなっている。

八月、海にも祭りにも行った。写真は何百枚も増えた。

それでも九月になって最初に見返したのは、終業式直後のその一枚だった。

夏休みは晴れた空から始まるものだと思っていた。

私たちの夏は、役に立たなかった一本の傘と、濡れたまま笑った校門前から始まった。