黄金の首飾りを断る叙勲
叙勲式の黄金首飾りは、サナの古傷を押した。
幼い頃につけられた拘束具の痕が、鎖の下で疼く。功績を認める儀式なのだから我慢しようとした。
皇帝ドレファスが留め具へ手を伸ばす前に止まった。
「痛むな」
「少しだけです」
「外す」
彼は触れてよいか目で確認し、サナが頷いてから鎖を外した。代わりに用意させたのは、軽い青布の徽章だった。彼女が金属より布を好むと、以前の制服選びで知っていた。
「これなら?」
「大丈夫です」
ドレファスは敵将の命乞いを無言で退ける恐怖の皇帝だ。それでもサナの首元だけは、布が擦れていないか確かめる。
式典官が功績文を読み上げた。
「皇帝陛下の命を救った褒賞として、サナを終身近衛とし、宮殿外への居住を禁ずる」
サナは徽章を握る。
「その褒賞は受けません」
式典官が目を見開いた。
「陛下のおそばに生涯仕える栄誉です」
「栄誉でも、住む場所は自分で選びたいです」
大臣が皇帝へ囁く。
「彼女を手元に置く好機でございます」
ドレファスの目が細くなった。
「好機?」
「陛下が最も執着なさる方ですから」
皇帝は終身任命書を二つに裂いた。
「余の執着を、彼女の移動禁止令に使うな」
サナへ向き直る。
「どの褒賞なら受ける」
「三年間の近衛任官と、城下に自宅を持つ許可を」
「許可は要らない。権利だ」
新しい任命書がその場で作られた。更新しない自由も記される。
式典官が黄金首飾りを戻そうとすると、ドレファスは青布の徽章だけをサナへ渡した。
「受け取るか」
彼女は自分で胸へ留める。
皇帝は全臣下へ告げた。
青布の色も、皇帝が一方的に選んだものではなかった。三色の見本を並べ、サナが夜空に近い濃紺を選んでいる。
叙勲者は皇帝の前へ跪く慣例だったが、古傷のある膝が痛むと知るドレファスは、その動作も省いた。
「立ったままでいい」
彼女だけを甘やかすという嘲りを、皇帝は自分への反逆と同じ目で封じた。
「サナが受けたのは功績の証だけだ。終身奉仕も宮殿居住も受けていない。褒賞を鎖へ変えることを禁ずる」