いちばん短い剣

月森カイの短剣だけが鞘に残る中、処刑王の反撃が攻略隊を薙ぎ払った。

《武器順行動》

射程の長い武器から順に一度ずつ行動します。

《初心者の短剣》

射程:二十センチ

全武器中、最短。

長槍、弓、大剣。強い武器ほど先に動き、そのたび処刑王は完璧な反撃を返す。全員が倒れた後、ようやくカイの手番が来た。

王の鎧は反撃のたび開き、最後の相手へ向く頃だけ胸の札が露出する。

《処刑許可証》

破壊すると対象を処刑。

攻略隊はそれを弱点だと思っていた。カイは短剣を抜き、札へ一ダメージを与える。紙は半分だけ裂けた。

処刑王が剣を上げる。次の行動順では、また長い武器から始まる。だが倒れた仲間の武器は地面にあり、装備者がいない。行動可能なのは短剣だけ。

二度目の手番。カイは札を切り取った。

王のHPは減らない。代わりに、攻略隊全員の頭上から《処刑対象》が消えた。

「なぜ我を斬らない」

「最後に動けるなら、最後まで見てから決められる」

処刑王の鎧の中には、武器を持たされた少年NPCがいた。長い武器の攻撃を受けるたび自動反撃させられ、札の命令で挑戦者を処刑していたのだ。

カイは短剣を逆手に持ち、残った拘束紐だけを切る。

王冠が床へ落ちる。少年は初めて、自分の手番を待たずに剣を置いた。

《処刑王討伐失敗》

《処刑許可証を破棄》

倒れていた槍使いが起き上がり、初めて行動順の最後まで戦場を見た。

「先に動くことばかり考えていた。王が何を守っているか、一度も見なかった」

少年NPCは処刑王の兜を脱ぎ、カイの短剣より短い木片を拾う。武器ではなく、許可証の残りへ《拒否》と書くための筆だった。

最後の手番は遅れではない。全員の選択を見届けた後でも、まだ変えられる余地だった。

攻略記録の行動順位には、短剣の次へ《少年の拒否》という新しい手番が追加された。誰でも最後から判決を変えられる手番だった。

《武器順戦闘を終了――最短の武器へ回ってきた最後の一手は、敵を斬るためではなく判決を取り消すために使われました》