ゴミ袋の中の花束

文化祭で使った紙の花が、黒いごみ袋へ押し込まれていた。

教室を花畑の写真館にするため、柚葉と絢が折り紙や薄紙で何百輪も作った。壁一面の藤、窓辺の向日葵、天井から下げた白い花。来場者はその前で笑い、何度も写真を撮った。

閉会後、装飾は十分でごみになった。クラスメイトたちは迷いなく剥がし、袋へ入れていく。

絢は黙って見ていた。昼間、他校の美術部員に「子どもの工作みたい」と笑われたのを、柚葉は知っていた。絢は片づけながら、美術部を辞めると言った。柚葉はすぐに否定したかった。何百輪も作れる人が向いていないはずがない、と言いかけたが、それもまた、絢を今の場所へ縛る言葉になる気がした。辞めることが逃げなのか、別の道へ移ることなのか、本人にしか決められない。

最後の袋を閉じようとしたとき、柚葉は口を押さえた。

「全部、持って帰ろう」

「どこに置くの」

絢の返事は静かだった。

柚葉は答えられない。保存したいのは花ではなく、絢が作った時間だった。けれど何百輪も抱えて帰れば、いつかそれ自体が重荷になる。

絢は袋から、潰れた花だけを三つ選んだ。破れた部分を内側へ折り、茎を短く切る。柚葉も一輪を選び、しわを花びらの模様に変えた。

四輪をリボンで束ねると、小さな花束になった。潰れた跡は消えず、左右も揃っていない。それでも壁一面に飾ったときより、四輪の輪郭ははっきり見えた。絢は初めて少し笑い、花の向きを直した。二人はそれを、毎晩遅くまで教室の鍵を開けてくれた用務員室の前へ置いた。名前は書かなかった。

残りの花は袋へ戻した。柚葉が口を結ぶと、紙がかすかに鳴った。捨てることは、作った意味まで捨てることではない。形を残さなくても、次の手は覚えている。

帰宅後、柚葉は花束の写真を一枚だけ現像した。絢は美術部を辞めたが、翌月、別の学校の造形講座へ申し込んだ。柚葉も写真部の公募へ、その一枚を出した。

ごみ袋の中へ戻った花畑には戻れない。それでも、潰れた花からつくった四輪は、二人を別々の次へ押し出した。