一グラムの昼休み

弁当工場の昼前、朝倉理央はポテトサラダの数値が少しずつ増えていることに気づいた。ウェイトチェッカーは基準内を示しているが、最初の容器より十六グラム重い。千食を作れば、終盤の材料が足りなくなる。

ラインは一分に二十個進み、蓋を閉じた後では中身を戻せない。品質担当は停止を求め、製造担当は昼の出荷に間に合わないと反対した。理央はどちらにも答えず、重くなった容器がいつ現れたかを先に並べた。

班長は充填機の設定を一グラム下げようとした。理央は操作を止め、直近二十個の記録を並べた。重さが増えるのは連続ではなく、材料を機械上部の容器へ補充した直後だけだった。

冷蔵庫から出したばかりのサラダは硬く、時間が経ったものは柔らかい。同じ圧力で押し出すと、硬い材料は出口の内側に残り、次の一押しでまとめて落ちる。機械の設定を下げれば、温度が揃った後には逆に不足する。

補充担当にも、空になってから大量に入れるのではなく、目盛りを下回る前に少量を足してもらった。機械の中の状態を大きく変えなければ、押し出される量も急には変わらない。理央は最初の三回だけ横で数値を読み、安定してから持ち場へ戻った。

理央は補充するサラダを一度に全量入れず、同じ室温になった小分け容器から一定間隔で足す手順へ変えた。充填機は止めず、補充直後の三個だけを別の台へ流して再計量する。すでに重かった四十個は蓋をする前に戻し、量を揃えた。

数値は数回の補充後も同じ範囲に収まった。予定していた千食目まで材料が残り、歩留まりも朝の計算どおりだった。

「一グラム下げる方が早かったのに」

班長が言うと、理央は記録紙の山を指した。

「一グラムの原因が変わるたび、また設定を変えることになります」

品質担当は停止時間ではなく、救えた材料の重量を記録した。設定を触らなかった理由が、数字にも残った。

昼休みのベルが鳴ったが、ラインの向こうで次の商品が運ばれてきた。午後は粘度の違うカレーだった。理央は休憩室へ行く前に、補充容器を同じ場所へ並べ直した。