三号機の違う住所

エレベーターの非常通話センターで、蓮見冬悟は閉じ込めの呼び出しを受けた。

遠隔監視には、青葉タワー三号機、十二階付近で停止と表示されている。冬悟は保守員へ救出要請を出し、乗客のけがを確認した。

中にいる男性は無事だったが、不思議なことを言った。

「表示は地下三階です。壁に波の絵があります」

青葉タワーに地下三階はなく、内装も木目調のはずだった。隣には同じ会社が管理する港南タワーがあり、そちらには地下駐車場と波の絵がある。

冬悟は要請先を確定する前に、かご内の号機札を読んでもらった。「K三」。青葉の三号機は「A三」だった。

一か月前、港南タワーで通話装置を交換した際、遠隔監視の登録先が青葉の古い番号のまま移されたらしい。画面を信じて青葉へ向かわせれば、保守員は空の十二階を探し、男性は隣の地下で待ち続ける。

冬悟は救出要請を港南へ変更し、警備室にも確認した。港南の三号機は地下三階で停止している。男性には、扉をこじ開けず、床に座って待つよう伝えた。地下で携帯電話は通じにくいが、非常通話だけは生きている。

冬悟は、男性の通話を保留にしたまま登録修正を始めなかった。閉じ込められた人にとって、無音の数分は救助が止まったように感じられる。保守員の現在地と到着見込みを短く伝え続け、別席に登録履歴の確認を頼んだ。救出と原因調査を同じ人が抱え込まないよう、作業を分けた。

十七分後、扉が開いた。男性の声の後ろに、保守員の「お待たせしました」が重なった。

「住所までエレベーターが間違えるんですね」

「間違えたのは機械ではなく、登録した人です」

冬悟は二棟の通話装置を全数照合するよう申し送りを出した。一件直して終われば、別の号機でも同じ誤登録が残る。

誤登録の原因となった交換日の作業票も、点検班へ送った。

午前八時、点検班が作業を始めた。

その直後、別の非常通話が鳴る。

画面には港南タワー二号機。乗客は「窓から公園が見える」と言った。

冬悟は要請を出す前に、号機札を読んでもらった。