両替機の異物

閉店後のゲームセンターで、景品保管庫の鍵が事務室から消えた。店長の祝部は鍵を硬貨皿へ置き、三人の担当者に高額景品の不足を問いただした。店内のデモ機が一斉に鳴り、皆が監視画面へ向いた十秒後、鍵は消失。事務室は内側から施錠され、窓もない。

容疑者は機械主任の小手森、レジ係の野老、仕入担当の神足。三人とも不足品を転売できる立場だった。衣服、鞄、机を調べても鍵はない。壁際には旧式の硬貨両替機があり、売上回収後なので内部は空だと小手森が説明した。

神足は景品の納品書を広げ、野老はレジ記録を提示した。小手森は機械を止めると客のデータが消えると言い、両替機の電源に触れさせまいとした。だが営業時間は終わっており、保守記録を読むことに支障はない。私は鍵を探すより先に、機械が十秒間に何を「硬貨ではない」と判断したかを確かめた。

手掛かりは三つだけだった。第一に、両替機は鍵が消えた時刻に「規格外金属一件」を記録していた。第二に、投入口の下端には鍵の黄銅塗料と同じ新しい擦り跡があった。第三に、投入された異物が落ちる保守用カセットを開ける副鍵を持つのは小手森だけだった。

小手森は「規格外なら返却口へ戻る」と言った。だがこの機種は幅のある異物を返却路へ送らず、機械を守るため鍵付きの保守カセットへ落とす。主任ならその仕様を知っている。

私は副鍵でカセットを開けた。硬貨の代わりに保管庫の鍵が入っていた。「小手森さんはデモ音の間に鍵を投入口へ押し込んだ。異物記録が時刻を、塗料の傷が通路を、副鍵の所持が回収できる人物を示します。鍵は機械に盗まれたのではない。通常の硬貨とは違う物だけを隔離する仕組みを、あなたが隠し箱として利用したのです」小手森さんは、異物を隔離する安全機構なら鍵を確実に保持し、ほかの者には開けられないと知っていました。返却されるという説明は仕様を逆に語った嘘です。機械の記録は、彼の知識そのものを犯行へ結びました。