予備の鞘が止めた刃

補給士サフィアは、討伐隊の剣より多くの鞘を荷車へ積んだ。

「鞘で魔獣を斬るのか」

剣豪ヴァスロは嘲り、自分の豪華な鞘だけを腰へ残した。戦果盤の仮寄与率は3%。サフィアは戦場で刃を振るわず、装備を渡すだけの役目だった。

標的の血錆獣は、傷口から赤黒い液を噴く。討伐隊が斬りつけるたび、その血が刃へまとわりついた。

しばらくすると、剣が持ち主の手を離れ、勝手に味方へ向き始めた。

「呪いだ!」

ヴァスロの大剣まで腕を引きずり、隣の盾兵を斬ろうとする。

サフィアは剣士たちの間を走り、古い鞘を外して予備の鞘へ差し替えた。内側には白い粉を染み込ませた布が張られている。刃を鞘へ納めると、血錆が乾いた殻になって剥がれ落ちた。

「抜き直してください」

呪いを失った剣が、再び持ち主の命令に従う。

血錆獣は血を浴びせ続けたが、サフィアは汚れた鞘を回収し、次の予備を渡した。剣士たちは斬るたび刃を納め、抜き、また斬る。その動作が怪物の呪いを毎回断ち切った。

ヴァスロだけは豪華な鞘を捨てられず、ついに大剣を手放した。彼の刃が背後から襲いかかる。サフィアは空の予備鞘を投げ、飛ぶ刃を受け止めた。

大剣が静まる。その横で、仲間の剣が血錆獣の核を貫いた。

帰還後、ヴァスロは「剣豪の威圧で呪いを抑えた」と申告した。サフィアの鞘は消耗品として捨てられかけた。

戦果盤が鞘の内布を解析する。怪物の呪力はすべて白い粉に吸われ、討伐隊の同士討ちを止めていた。豪華な鞘だけには、味方を斬ろうとした呪力が濃く残る。

サフィアが新しい鞘を受付台へ置くと、ヴァスロの大剣が自ら豪華な鞘を抜け、そちらへ収まった。

剣士たちは豪華な装飾を外し、サフィアの白い内布を確かめてから武器を腰へ戻した。刃を従わせるのは腕前だけではない。ヴァスロが大剣の柄を握っても抜けず、新しい統括官が頷いたときだけ静かに鞘を離れた。

予備品と笑われた鞘が、剣士たちの命令系統まで収め直した。

【再算定完了】

【サフィア・討伐寄与率:3% → 95%】

【隊内順位:最下位 → 首位】

【役職更新:補給士 → 呪装統括官】