二人目の裏切り者
柴垣依子は、投票せずに待った。
鶴見晴貴が最初に冨樫莉都を選ぶ。端末が赤く鳴った。
〈誤投票を確認。鶴見晴貴を裏切り者へ追加します〉
その瞬間、依子は晴貴へ票を入れた。
壁の規則は一つだった。
〈裏切り者ではない人物へ投票した者も、その時点から裏切り者とする。最後に投票する人物が、投票時点の裏切り者へ投じれば、その人物を解放する〉
開始時の裏切り者は、依子自身だった。黒い札を引いた時、彼女は絶望した。二人は当然、依子を当てようとする。だが規則は、裏切り者が一人のままとは言っていない。
晴貴は莉都を疑っていた。依子はあえて何も弁明せず、莉都へ視線を送り、二人が共謀しているように見せた。焦った晴貴は先に投票する。
外した瞬間、彼も裏切り者になる。
莉都は端末へ手を伸ばしたが、依子が先に押さえた。
「あなたが次に投票すると、最後が私になる。先に確定して」
「あなたが裏切り者なら、私があなたへ入れれば正解でしょう」
「そう。でも最後の投票者だけが解放される。あなたが先に正解すれば、私が最後に晴貴へ入れられる」
莉都は迷った末、依子へ投票した。正解だが、二番目なので勝利条件を満たさない。
依子が三番目に晴貴へ入れる。
『初期の裏切り者が、追加された裏切り者を告発するのですか』
「裏切り者へ投票した人物を解放すると書いてある。投票者が裏切り者ではいけない、とはない」
残りゼロ。
〈最終投票者、柴垣依子〉
〈投票時点の対象、鶴見晴貴――裏切り者〉
〈条件成立〉
依子の首輪が外れた。
晴貴は怒りで端末を叩く。
「俺を罠にはめた時点で、お前は最初から裏切り者らしい人間だった」
依子は黒い札を卓へ置く。
「役職は最初から。でも勝敗を決めたのは、あなたが間違えた後の現在形」
出口が開く。
「一人を探すゲームだと思ったから負けたの。裏切り者は、投票のたびに増える部屋だった」
赤い候補欄には、依子と晴貴、二人の名が並んでいた。