停電の家族画
再婚した家へ、夫は古い家族画を持ち込んだ。
亡くなった前妻と幼い息子、若い夫が並ぶ油絵。
新しい妻は飾ってよいと言ったが、息子は嫌がった。
新しい家族の居間に、昔の家族がこちらを見ているのは落ち着かない。
ある嵐の夜、停電した。
暗闇の中で、絵の前妻が話した。
「そこ、私の席じゃないよ」
家族画の人物は、部屋の灯りがすべて消えたときだけ話した。
懐中電灯を向けると黙る。
消すと、また声がする。
「どの席?」
夫が尋ねた。
「あなたの隣。今は別の人の席でしょう」
新しい妻は息をのんだ。
夫は絵を残すことで前妻を大切にしているつもりだった。
だが食卓でも旅行でも、前妻ならどうしたかを口にした。
新しい妻が作った料理を、前妻の味と比べた。
思い出を守るふりで、現在の家族へ空いた席を強いていた。
絵の幼い息子も話した。
「僕、ずっとこの年じゃない」
現在の息子は高校生だった。
父は息子が変わるたび、「母さんが見たら」と昔の姿へ戻そうとした。
「絵を捨てる?」
新しい妻が尋ねた。
前妻は答えた。
「それを私に聞かないで」
停電が続く間、四人は暗い居間で話した。
夫は、前妻を忘れることが怖かったと認めた。
息子は、忘れたい日もあると言った。
新しい妻は、前妻の代わりになるつもりはないと初めてはっきり言った。
電気が戻ると、絵は普通の家族画へ戻った。
翌日、夫は絵を廊下へ移した。
隠す場所ではない。
居間の食卓からは少し離れ、通るたびに会える場所だった。
空いた壁には、新しい写真を掛けた。
夫、新しい妻、高校生の息子。
三人とも撮影前に喧嘩し、笑顔が少し硬い。
それでも現在の家族だった。
数か月後、また停電した。
廊下の絵から前妻の声がした。
「写真、息子の目が閉じてる」
現在の息子が暗闇で笑った。
「お母さんの絵だって、父さんの鼻が変だよ」
「画家が下手だったの」
夫が抗議し、新しい妻も笑った。
二枚の家族は、一つに混ざらなかった。
廊下と居間、それぞれの場所にいた。
失った人を残すことと、今いる人の席を空けることは違う。
停電のたび、家はその違いを確かめるように、しばらく温かい暗闇になった。